2010 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール磁気圏における通常プラズマと対プラズマの挙動の違いの解明
Project/Area Number |
21540243
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小出 眞路 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (20234677)
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Keywords | カーブラックホール / ブラックホール磁気圏 / 磁気リコネクション / エルゴ領域 / 一般相対論的電磁流体力学 / 通常プラズマ / 対プラズマ |
Research Abstract |
本研究の目的はブラックホール磁気圏におけるイオンと電子からなる通常プラズマと陽電子と電子からなる対プラズマの挙動の違いが天文学的高エネルギー現象への影響を解明することである。最終的には通常プラズマと対プラズマが混在するような実際の天体プラズマの数値シミュレーションを行い,とくに相対論的ジェットの形成機構に対する影響を明らかにする。 平成22年度には本研究課題に関連し標準相対論的MHD(RMHD)の数値計算を行い,その標準方程式の理解について大きな進展があった。例えば,これまで標準RMHD方程式を用いる際に危惧されていた因果律の問題が実は杞憂であることが判明した。すなわち,標準RMHD方程式から導かれる電磁波の分散関係は,その群速度が光速度を超えるのであるが,群速度というものは今まで考えられていたような情報の伝播速度ではないことが明らかとなり,群速度は因果律とは関係しないとの認識が得られた。これにより標準RMHD方程式はそのまま用いても因果律に反するような現象は起こらないことが明らかとなり,その方程式を使った数値計算を行う拠所が開かれた。一方,標準良MHD方程式では通常プラズマと対プラズマの違いが現れない。その違いを明らかにするためには平成22年度に確立した一般化されたRMHD方程式を検討する必要がある。標準RMHDが使えるプラズマの条件下であれば,一般化されたRMHD方程式に特有な項のほとんどは無視できる。できないものとして考えられるのは,熱起電力の項とホール効果の項のみである。2流体の温度がほぼ同じであるとき,対プラズマではそれらの項は現れないのに対し,通常プラズマでは無視できない可能性がある。以上の結果により,本研究課題としては通常プラズマにおいて熱起電力とホール効果を取り入れた標準RRMHD数値計算を行えばよいことになる。平成23年度度は(熱起電力とホール効果を無視した)標準RMHDの数値計算を行い,ブラックホールまわりのプラズマの挙動を明らかにする。さらに,通常プラズマと対プラズマの違いとして考えられる熱起電力とホール効果を考慮した計算も行いたい。
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