2011 Fiscal Year Annual Research Report
ブラックホール磁気圏における通常プラズマと対プラズマの挙動の違いの解明
Project/Area Number |
21540243
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小出 眞路 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (20234677)
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Keywords | カーブラックホール / ブラックホール磁気圏 / 通常プラズマ / 対プラズマ / 一般相対論的電磁流体力学 / 磁気リコネクション / エルゴ領域 / ホール効果 |
Research Abstract |
本研究の目的はブラックホール磁気圏におけるイオンと電子からなる通常プラズマと陽電子と電子からなる対プラズマの挙動の違いを明らかにし,それがどのように天文学的高エネルギー現象に関わっているかを解明することである.これまでに一般相対論的2流体力学近似から一般化された一般相対論的電磁流体力学(GRMHD)方程式を新たに導き,両者の違いを明らかにした. 一般化されたGRMHD方程式から対プラズマの場合は電子と陽電子の温度が極端な電荷分離が起こらない限り同じになると考えられ,標準的な相対論的オームの法則を用いた抵抗性GRMHDの標準方程式で記述される.それに対して,通常プラズマではブラックホールのまわりで電子とイオンの温度が違うので,熱起電力の効果が無視できない可能性がある. 当該年度では,まず対プラズマのブラックホール付近の振る舞いを明らかにするために,抵抗性GRMHDの標準方程式を用いた数値上計算を行った.これまで電気抵抗を無視した理想GRMHD数値計算が行われ,回転するブラックホール近傍では,はじめ一様な磁場であっても,エルゴ領域内で薄い電流シートをともなった反平行磁場が形成され,磁気リコネクションが起こる状況が自然と現れることが示されて来た.しかし,これまでは電気抵抗が考慮されていないので,磁気リコネクションの数値計算はできなかった.今回,世界ではじめてブラックホール近傍での磁気リコネクションの数値計算を行った.初期磁場としてはsplit-monopole配位という赤道面で電流シートのある場合を用いた.その結果,期待されていたよりも速い磁気リコネクションが起こることが明らかとなった.さらに,この数値計算の結果を説明する『ダルマ落とし機構』を提案し,今後の解析の方向性を与えた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題で扱うべき方程式の定式化を行い,それに基き現実的な問題に課題を定式化した.すなわち,本研究課題においてはホール効果を取り入れた抵抗性GRMHD方程式を考慮すれば十分で,ホール効果が入っている場合と無視される場合のプラズマの挙動を比較すればよいことが明確になった.既にホール効果が無視できる場合については数値計算を行っている.そこでブラックホール近傍での磁気リコネクションの数値計算を世界に先駆けて行った.
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Strategy for Future Research Activity |
今後,はじめから磁気リコネクションが起こるようなsplit-monopole磁場配位を用いず,例えば一様磁場から回転するブラックホールのまわりで磁気リコネクションが自発的に起こることを数値計算により実証する.さらに,そのホール効果を考慮した計算を行い,通常プラズマと対プラズマの挙動の違いを明らかにする.
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Research Products
(6 results)