2011 Fiscal Year Annual Research Report
rプロセス元素に見る矮小銀河・銀河系ハローの星形成史
Project/Area Number |
21540244
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
石丸 友里 国際基督教大学, 教養学部, 准教授 (90397068)
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Keywords | 理論天体物理学 / 銀河の化学進化 / 金属欠乏星 / 銀河系 / 矮小銀河 / rプロセス / 超新星爆発 / 元素合成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、銀河系ハローにある金属欠乏星の化学組成を手がかりに、我々の銀河系の化学進化の観点からrプロセス元素の起源を明らかにすることである。金属欠乏星の観測的特徴として、rプロセス元素の化学組成比が非常に大きく分散することが知られている。本研究はこれまでに、a)個々の超新星爆発が誘発する星形成と共に銀河系が形成されたという銀河形成論に基づけば、rプロセスの起源は限られた質量の星の超新星爆発にあることを銀河の非一様化学進化モデルを用いて議論してきた。 しかし最近の元素合成の研究によって、中性子星同士の合体の方がrプロセスの起源としてより有力と着目されている。そこで本研究ではさらに、b)銀河系が様々な星形成率の矮小銀河の衝突・合体から形成されたならば、中性子星合体説でも観測データを説明できると予測した。平成23年度は、(b)の仮説に従って、異なる星形成史の矮小銀河の合体から銀河系ハローを形成する化学進化モデルの構築を行った。矮小銀河の質量関数、銀河質量と星形成率、ガス放出率の相関関係を吟味し、銀河系ハローのrプロセス元素の化学組成の分散を説明できるかを検討した。その結果、大質量の矮小銀河ほど星形成率が高ければ、rプロセス元素の起源が中性子星の合体にある場合でも、観測データと矛盾しない結果が得られることを示した。今後はさらに定量的な議論を行い、確定的な結論を得るために、(b)の仮説に基づく銀河系非一様化学進化モデルを構築する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来は、rプロセス元素の起源が中性子星の合体にある場合は、銀河系ハローで観測されている化学組成の分散を説明できないとされてきた。しかし、本研究では矮小銀河の衝突・合体から銀河系ハローが形成されたならば、元素合成理論と銀河の化学進化との間の矛盾が解消できるという新たな仮説を提案し、昨年度までに単純化したモデルによって示すことに成功した。この結果は、この分野の研究集会においても国内外で高く評価され、今後の結果が期待されている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はさらに、矮小銀河の衝突・合体から銀河系ハローが形成される場合の非一様化学進化モデルを構築し、様々な元素の分散や金属量分布などについての理論的予測を観測データと比較することによって、より定量的な議論を行う。これまでの研究成果と合わせた進展は、6月末の国際学会で発表予定である。また、今年度後半には、上記の非一様化学進化モデルを用いた定量的な議論を行い、日本天文学会等で発表する予定である。
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Research Products
(2 results)