2009 Fiscal Year Annual Research Report
バルジ、ディスク、ブラックホールの共進化と銀河形成論の新展開
Project/Area Number |
21540246
|
Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
辻本 拓司 National Astronomical Observatory of Japan, 光赤外研究部, 助教 (10270456)
|
Keywords | 銀河形成 / 化学進化 / 銀河風 / バルジ / ディスク / ブラックホール / 化学組成 / スターバースト |
Research Abstract |
本研究では、バルジ、ディスク、ブラックホールがどのように相互作用しながら進化・成長し、そしてこれらの共進化を軸にどのように銀河が形成されてきたかを、「星の化学組成解読」、「銀河の化学進化モデル構築」、「N体/流体数値シミュレーション」等の手法を駆使することで明らかにし、謎に包まれた銀河系進化の物理過程を理論的に解明することを目指している。 本年度は、数値シミュレーションによる銀河中心からのウインドとディスクの相互作用の解明に焦点を当て、戸次とともに計算を行い、その結果を2つの論文にまとめた。ウインドのバルジからの放出過程をバルジの物理的特徴への依存性も調べ、ハロー内のガスとの相互作用、その後のディスクへの降着過程等を明らかにした。まず第一に、銀河風として銀河ポテンシャルから逃げ出すか、銀河内に留まるかというウインドの運命を決定する条件を明らかにすることができた。さらに、ウインド物質がディスク上にどのように分布するかを明らかにした。これはウインドによって運ばれる重元素を"chemical tagging"とすることから、ディスク星の化学組成の解読作業を同時進行させることで、ウインド現象の過去の詳細を解明することができたのである。このようなアプローチが取れるのは唯一銀河系に限られる。さらに、シミュレーションと並行してディスクの化学進化モデルを考察し、self-consistentなウインド+ディスクモデルの構築に成功した。ここで重視すべき成果の一つが、ウインド発生の時期、規模、タイムスケールを明らかにしたことであり、この結果はバルジの形成進化モデルへの貴重な情報源となった。以上については、Bland-HawthornおよびFreemanとの共著の論文にまとめあげ、今年2月に受理された。
|