2010 Fiscal Year Annual Research Report
バルジ、ディスク、ブラックホールの共進化と銀河形成論の新展開
Project/Area Number |
21540246
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
辻本 拓司 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (10270456)
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Keywords | 銀河形成 / 化学進化 / 銀河風 / バルジ / ディスク / ブラックホール / 化学組成 / スターバースト |
Research Abstract |
本研究では、銀河進化モデルの構築、化学組成解読、数値シミュレーションという理論的手法および観測データを取得・分析することから、バルジ、ディスク、ブラックホールの共進化の過去を明らかにし、銀河系に代表される円盤銀河の形成理論への新たなパラダイムを、オーストラリアの海外共同研究者との連携を軸に確立することを目指している。本年度はまず5月に連携研究者であるFreemanとの会合を実現させた。現在FreemanをPIとし、Iバンドによるバルジ星の視線速度と化学組成を観測するプロジェクトを遂行中である。(2度x2度)視野を12領域において約2万個の星についてのデータ取得を目指しており、代表者である辻本はサイエンスアドバイザーとしてコミットしている。この観測プロジェクトのサイエンスゴールはバルジの起源を解明することにあり、その目標達成のために、回転速度と重元素量の空間分布を明らかにしていくことを会合にて確認した。これは、バルジの起源が異なると回転速度の分布に違いがあることが指摘されており、銀河系バルジの回転速度の分布を詳細に知ることが、その起源を知る有力な手掛かりとなると考えられるからである。また同時に、重元素量の勾配もバルジ形成シナリオの敏感なバロメータとなることから、両者の分布を明らかにできれば、起源解明への大きな一手となり得る。来年度には初期成果を期待できる段階になりつつある。さらに、連携研究者であるBekkiとともに、化学進化モデルおよぶN体シミュレーションを通じて、銀河進化の謎の解明に取り組み、その結果を計3本の論文にまとめ、それらはすでに受理されている。なかでも重水素の太陽近傍における進化を追うことから、今から数十億年前にバルジでのスターバーストに付随した銀河風によるディスク汚染が起きたという証拠を突き止め、バルジとディスクの共進化についての新たな知見を得ることができた。
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