2011 Fiscal Year Annual Research Report
バルジ、ディスク、ブラックホールの共進化と銀河形成論の新展開
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21540246
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
辻本 拓司 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (10270456)
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Keywords | バルジ / ディスク / ブラックホール / 化学進化 / 銀河形成 |
Research Abstract |
本研究では、バルジ、ディスク、ブラックホールがどのように相互作用しながら進化・成長し、そしてこれらの共進化を軸にどのように銀河が形成されてきたかを、「星の化学組成解読」、「銀河の化学進化モデル構築」、「N体/流体数値シミュレーション」の手法を駆使することで明らかにし、謎に包まれた銀河系進化の物理過程を理論的に解明することを目指してきた。当該年度における大きな成果は以下の2つである。(1)N体数値シミュレーションを実行することより、未だ未解決であるバルジの形成過程を明らかにすることができた。現在シミュレーションで得られるバルジは楕円銀河の小型版である「古典的バルジ」と呼ばれるものであるが、現実の宇宙に存在するバルジの半数以上は、「擬似バルジ」なのである。そして、銀河系バルジはまさに後者に属し、コールドダークマター宇宙が予言するパルジの範疇外にある。このように銀河系バルジの形成は謎に包まれ、観測結果を矛盾無く説明できるモデルはこれまで存在しなかった。それに対する答えとして、厚いディスクと薄いディスクの2成分バルジ起源説をモデル化し、銀河系バルジが擬似バルジの特徴である円筒状の回転速度分布を持つ一方で、古典的バルジの特徴である短軸方向に金属量の勾配が存在するというパラドックスの解明に成功した。(2)バルジ研究における近年の大きな進展の一つに、単純な一つの星種族からバルジが構成されているという既成概念から脱却し、バルジが2つの成分をもつことが明らかにされてきたことが挙げられる。今回行った計算から、2つの成分は厚いディスクと薄いディスクに対応するものであることがわかった。重元素量が小さい成分は比較的短い時間に厚いディスクから形成されたバルジであり、一方、重元素量が高い成分は、数十億年の時間をかけて薄いディスクから形成されたものであり、またtop-heavyな初期質量関数が不可欠であることもわかった。
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