2011 Fiscal Year Annual Research Report
非可換空間上の位相的ソリトンと低エネルギー物理現象
Project/Area Number |
21540254
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
江澤 潤一 独立行政法人理化学研究所, 岩崎先端中間子研究室, 客員研究員 (90133925)
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Keywords | 非可換空間 / 非可換ソリトン / 量子ホール効果 / 量子位相 / 2層量子ホール系 / ジョセフソン電流 / スカーミオン / ボーズ凝縮 |
Research Abstract |
非可換空間が実現している最も単純な系は量子ホール系である。最近のvon Klitzingグループの実験報告によると2層量子ホール系において,層間にジョセフソン効果とみなせる現象が発見されている. Phys.Rev.Lett.104(2010)116802を参照.これは20年以上前に私が初めて予言した現象である.本研究目的の「2次元空間の非可換性と低エネルギー物理現象」の緊急の課題として,この実験結果の解析と新しい予言を求めて,2層量子ホール系における電流の理論的解析を行った.先ず,複合ボソンのボーズ・アインシュタイン凝縮の結果として,2層間に層間コヒーレンスが発生し,2層での電子の位相差θが物理量になることを示した.更に,非可換空間での運動方程式を求めることにより,この位相差θの満たすべき方程式を導いたが,これはサインゴードン方程式になる.最も重要な結果として,位相差の微分dθ/dxがx軸方向に流れる面内ジョセフソン電流となり,sinθが層間ジョセフソン電流になることを証明した.この解析の結果として,入射電流が臨界値以下の時のみ,層間トンネル電流がコヒーレント電流になる事を示した.これは上記の実験結果をよく説明する.更に,試料に横磁場をかけたときの臨界磁場の変化を調べたが,これは新しい予言である.研究成果は原著論文2編に纏め,投稿中である.私の属する実験グループ(澤田安寿京都大学教授主催)にこの予言の検証を提言した.なお,試料は上記のvon Klitzingグループより提供を受け,現在,実験の準備を始めた所でもある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,「2次元空間の非可換性と低エネルギー物理現象」の緊急課題として,2層量子ホール系層間ジョセフソン効果の研究を行った.これは当初の「研究の目的」に記載されていなかった研究課題であり,このために,当初の研究目的の達成に多少の遅れがでた.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,「非可換空間上の位相的ソリトン」として,2層量子ホール系におけるスカーミオンとそれを分解したメロンの研究を遂行する.特に,2層間で電子密度を変化させた時のメロン対の電荷分布等の物理量の解析を行う.
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Research Products
(6 results)