2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540260
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
淺賀 岳彦 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (70419993)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷本 盛光 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90108366)
中野 博章 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60262424)
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Keywords | 素粒子理論 / 宇宙物質創成 / ニュートリノ質量 / 大気ニュートリノ |
Research Abstract |
「ニュートリノ質量の起源の解明」は現在の素粒子物理における最重要課題の一つである。我々は先行研究において、質量100GeV程度以下の「軽い右巻きニュートリノ」による解明を試み、「vMSM模型」と呼ばれる新しい理論的枠組みを提示してきた。この模型では、ニュートリノ質量の起源だけでなく、宇宙暗黒物質および宇宙バリオン数の問題が同時に解決される。本研究では、この模型における宇宙バリオン数生成機構および「軽い右巻きニュートリノ」の検証方法について考察した。 「軽い右巻きニュートリノ」による宇宙バリオン数生成を記述する際、その生成消滅過程だけでなくフレーバー間混合の効果を取り入れる必要があるため、密度行列を用いた定式化が用いられる。我々は世界で初めて、ニュートリノ密度行列の運動量依存性を明らかにした。そのために粒子生成消滅率に対する運動量依存性を計算し、様々な運動量モードに対する密度行列の発展方程式を数値的に解析した。その結果、密度行列の運動量依存性は熱平衡分布と比較して大きくゆがむ事が判明した。その理由は、高運動量モードは生成率が抑制され、反対に低運動量モードは生成が加速されるためである。我々は運動量依存性を考慮した密度行列の発展方程式を解くことにより、宇宙バリオン数生成量のより正確な評価を行うことに成功した。 また一方、「軽い右巻きニュートリノ」の実験観測による検証可能性についても検討した。我々は地球大気中で生成される「軽い右巻きニュートリノ」がスーパー神岡実験の検出器内で崩壊するシグナルを見いだす可能性について考察した。我々は先行研究では考慮されていなかった、右巻きニュートリノの質量が大気での生成率および検出器内での崩壊率に与える影響を定量的に評価した。さらに、スーパー神岡実験におけるシグナルの特徴を見いだすために、右巻きニュートリノの崩壊から発生する電子・陽電子対のエネルギー和の分布とそのopening angle分布を求め、実験でシグナルとバックグラウンドを区別するための方法を提示し、今後のスーパー神岡実験での観測・解析にたいして大きなインパクトを与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究が目指す右巻きニュートリノによる宇宙バリオン数生成に関しては、生成量の評価を改善する研究成果が得られたので、順調に研究が進展していると考えている。さらに、当初想定していなかった地球大気中で生成される「軽い右巻きニュートリノ」の検出方法に関する研究が予想以上に進展し、本年度中にその研究成果を論文発表することが可能となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究課題の最終年度である。そこでニュートリノ質量、宇宙暗黒物質および宇宙バリオン数の起源を同時に解決する統一した素粒子の枠組みを構築する。さらに、日本で行われているJ-PARC加速器を用いたT2K実験などによる「軽い右巻きニュートリノ」の検証可能性についても研究を行う。 一方で、本研究を通じて得られた研究成果を広く発表するために、国内研究会だけでなく、国際会議などにおいて積極的に成果発表を行うことにする。
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Research Products
(4 results)