2011 Fiscal Year Annual Research Report
初期宇宙との関連に基づく標準模型を越える理論の研究
Project/Area Number |
21540262
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
末松 大二郎 金沢大学, 数物科学系, 教授 (90206384)
|
Keywords | ニュートリノ / 暗黒物質 / 初期宇宙 / 超対称性 / フレーバー構造 / バリオン数生成 |
Research Abstract |
標準模型を越える理論的枠組みは、近年素粒子実験・宇宙観測を通して明らかになっているニュートリノ質量とレプトン混合、暗黒物質の存在、宇宙のバリオン数非対称を同時に説明することが要求される。この観点から、輻射ニュートリノ質量生成模型を基礎として、ニュートリノ質量・レプトンフレーバー混合と暗黒物質残存量の定量的説明、レプトンフレーバーを破る過程等に対する実験的制限等を条件として課しつつ、同一の枠組みの中で、宇宙のバリオン数の起源を説明する可能性について定量的な検討を進め、以下の結果を得た。1.TeV領域に質量を持つ最も軽い右巻きニュートリノを暗黒物質候補とし、次に重い右巻きニュートリノのCPを破る崩壊に基づく熱的レプトン数非対称生成を考える場合、現在観測されている宇宙のバリオン数を説明するには、レプトン数を破る散乱過程を十分に抑制するために非常に高い精度の質量縮退を新たに導入された場に対して要求することが必要であることを示した。これは、従来考えられてきた共鳴効果に基づくレプトジェネシスとは異なり、輻射ニュートリノ質量生成模型に含まれる場に対して許される新たな可能性である。2.初期宇宙のインフレーションを実現するよう模型を拡張することにより、インフラトンの崩壊に基づきグラビティーノ問題を回避するのに十分に低い再加熱温度で要求されるバリオン数生成が可能となることを示した。この拡張は、ニュートリノ質量の小ささを説明する際に本質的なパラメータの小ささをも自動的に説明することを指摘した。3.新たに加えられた2重項スカラー場の中性実成分を暗黒物質とした場合のバリオン数非対称生成について新たに得られたニュートリノ振動実験結果を考慮し、その定量的検討を進めている。
|