Research Abstract |
2011年は,本研究の最終年度でもあり,研究の新しい方向性を示唆するいくつかの研究成果を得た.(i)観測可能なファミリーゲージボソンのモデルの構築:これまでは,ファミリー対称性として,グローバル対称性を想定してきたが,質量ゼロのスカラー粒子の出現を避けるためにも,ゲージ対称性(局所対称性)と考えるべきであろう.隅野(2009年)は,荷電レプトンの質量公式が驚くべき精度10^<-5>で成立することを理解するためには,ファミリー・ゲージ対称性の存在を考えるべきと主張した.この流れに沿って,ファミリー・ゲージボソンの観測可能性を論じ(Koide-Sumino-Yamamaka, 2011),また,隅野機構を超対称性モデルでも適用可能にするために,新しいタイプのファミリー・ゲージ・ボソンのモデルを提唱した(Koide-Yamashita, 2012).この研究は,今後は重要性を増し,更に発展して行くと思われる. (ii)新しい荷電レプトンの質量行列形の現象論的発見:ユカワオン模型の特徴の1つは,すべての質量行列をある1つの基本的ユカワオンVEV<Φ>で統一的に理解しようとすることにある.従来のユカワオン模型では,荷電レプトンの質量行列M_eはM_e=<Y_e>=<Φ_e><Φ_e>で与えられていた.しかし,<Y_e>と<Φ_e>の関係を少し変えることにより,従来のユカワオン模型が驚くほど簡潔になり,観測量とのフィッティングも改善されることを見つけた(Koide-Nishiura 2011, 2012). (iii)SU(5)GUTなど,大統一理論のもとでのユカワオン模型への制約の研究:ユカワオンは標準模型でのゲージ粒子たちとは相互作用は行わない.すなわち,ユカワオンの存在は大統一理論SU(5)には影響を与えない.しかし,SU(5)理論を採用すると,逆にユカワオン模型にはいくつかの制約が生ずる(Koide, 2011, 2012).ユカワオン模型の大統一理論への組み込み問題は,今後の研究を待つ.
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