2011 Fiscal Year Annual Research Report
パートン分布の荷電対称性の破れと海クォーク分布のフレーバー非対称性
Project/Area Number |
21540268
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
若松 正志 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (40135653)
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Keywords | 核子の内部構造 / カイラル対称性 / 海クォーク分布 / 荷電対称性 / 深部非弾性散乱 / NuTeVアノマリー / ストレンジ・クォーク分布 / 反クォーク分布 |
Research Abstract |
本研究計画の目的は、「パートン分布の荷電対称性の破れと海クォーク分布のフレーバー非対称性」を統一的に理解することであったが、ようやく数値計算を含むすべての研究が完成し現在論文にまとめつつある。これまでのパートン分布の荷電対称性の破れの研究は、ほとんどが、Satherの模型(あるいはその変種)という信頼性のはっきりしない模型に基づくものであった。これに基づくThomasやLonderganの研究によれば、有名なNuTeVアノマリーの解消のために果たす核子中のパートン分布の荷電対称性の破れの役割は、ストレンジ・クォークと反ストレンジ・クォークの分布の非対称性の役割に比べてはるかに重要であると結論されていた。今回の私達の研究は、パートン分布の研究で既に信頼性が確立しているカイラル・クォーク・ソリトン模型の枠組みの中で、u-クォークとd-クォークの質量差を摂動として扱うことにより、パートン分布の荷電対称性の破れと、ストレンジ・反ストレンジ分布の非対称性を、同一の理論基盤で扱うことを目指したものである。非常に面白いことに、ストレンジ・クォークと反ストレンジ・クォークの差に対する私達の模型の予言は、イタリアのNNPDFグループの最新のglobal fitの結果と、x-依存性を含めて驚く程よく似ていることがわかった。さらに、NuTeVアノマリーの問題で、パートンの荷電対称性の破れが果たす役割は、ストレンジ・反ストレンジ分布の非対称性の役割に比べて、1/5以下であり、ThomasやLonderganの結論は必ずしも正当化されないことがわかった。その他の分布に対しても、NNPDFグループのfitとの比較を通じて、反クォークを含む様々なクォーク分布に対する私達の模型の信頼度の高さを確信することができた。
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Research Products
(8 results)