2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540277
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
伊藤 直紀 上智大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (20103939)
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Keywords | 高密度天体 / 量子輸送現象 / ブラックホール / 中性子星 / 降着円盤 / コンプトン散乱 |
Research Abstract |
本年度は電子と光子の高エネルギー逆コンプトン散乱を精密計算した。研究成果は、アメリカ物理学会の機関誌であるPhysical Review Dにすでに発表されている。この論文において、われわれは、これまで知られていなかった逆コンプトン散乱の解析的なふるまいを明らかにした。この研究により、逆コンプトン散乱の理論的研究は新たな段階を迎えたといえるであろう 以上の論文発表のほかに、本年度は、銀河団のSunyaev-Zeldovich効果の理論的な研究についても研究を行った。とくにSunyaev-Zeldovich効果を相対論的に計算する解析的な方法について大きな改良を行った。この研究により、種々の計算方法の間の関係が明らかになった。 Sunyaev-Zeldovich効果の観測については、今年度は多くの大きな発展があった。とくに、Michael Zemcovをはじめとするカリフォルニア工科大学のグループが、2009年に打ち上げられた赤外線観測衛星Herschelをもちいて、Bullet Clusterを250 microns, 350 microns, 500 micronsの波長域でSunyaev-Zeldovich効果観測を行うことに成功した。かれらの観測結果は、われわれが1998年、および2000年にAstrophysical Journalに発表した計算結果と完全に一致している。これにより、われわれの理論計算の正しさが、観測的にも証明されたことになる。この事実は、現在、多くの宇宙物理学者の注目の的になっている。
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Research Products
(3 results)