2009 Fiscal Year Annual Research Report
多自由度相関電子系における光誘起ダイナミクスの理論
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21540312
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石原 純夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (30292262)
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Keywords | 光誘起相転移 / ポンププローブ法 / 強相関電子系 / 光物性 / スピン状態 / 遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
本研究課題では、光誘起相転移や光誘起現象において光照射による複数の自由度や秩序の変化が生じることで,劇的でかつ興味のある現象に着目し、その特異な光物性とミクロな機構の解明を目指す。本年度は特に「光誘起反強磁性絶縁体-強磁性金属転移におけるスピンの役割」について以下のことを実施した。マンガン酸化物における光照射による反強磁性絶縁体-強磁性金属相転移現象を動機として、スピンと伝導電子が強く結合した系における光誘起現象について理論的に調べた。理論模型として伝導電子と局在スピンが強く強磁性的に結合した拡張された二重交換模型を設定し、電荷秩序反強磁性絶縁相を再現するために、局在スピン間の反強磁性超交換相互作用と隣り合う伝導電子間のクーロン相互作用を導入した。この模型を有限サイトのクラスターにおいて密度行列繰り込み群法ならびにランチョス法による厳密対角化法を用いることで、電子構造とその時間発展を計算した。得られた結果を以下にまとめる。(1)光照射の初期過程において、反強磁性相関の変化、一電子状態密度の変化、光学スペクトルのギャップ内構造の変化が強く相関していることを見出した。これらが伝導電子のサイト間トランスファーにより支配されていることを明らかにした。(2)電子構造のポンプ光強度依存性を調べた。これを調べるための電子・光子相互作用の定式化を行った。ポンプ光強度の増大とともに、初期状態の電荷相関と反強磁性相関は減少すること、後者の変化は特に弱励起の場合に顕著となることを見出した。これは電荷秩序がポンプ光の導入により直接崩壊するのに対して、反強磁性相関は電子の運動により減少することに起因している。この結果は、二重交換模型の平衡状態において従来から認識されている電荷スピン間の強い相関の概念を超えたものであると言える。特に一次元クラスターの数値計算により得られた結果は、光の導入により生成される電荷ソリトン対の運動と、この運動に影響を与える局在スピン相関の効果として解釈できることを示した。
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