2010 Fiscal Year Annual Research Report
多自由度相関電子系における光励起ダイナミクスの理論
Project/Area Number |
21540312
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石原 純夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30292262)
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Keywords | 光物性 / 強相関電子系 / 光誘起相転移 / 軌道自由度 / 相転移 |
Research Abstract |
本研究では,スピン,軌道などの多自由度を有する強相関電子系を対象とし、その光誘起相転移現象の微視的機構を明らかにする.特にスピンや軌道秩序,誘電秩序,スピン状態(高スピン状態,低スピン状態等)など,複数の自由度の変化を伴った光誘起相転移現象や光励起現象を対象として取り上げる. 平成23年度の繰り越し分による研究課題として以下の研究を実行した。"軌道縮退系のフラストレーション効果と光応答"。軌道縮退系の光誘起現象を解析する前段階として、軌道自由度が本質的に持つフラストレーション効果とその光応答について調べた。特に幾何学的なフラストレーションと軌道フラストレーションの両者が存在するときの両者の競合と協力現象について詳細に解析を行った。具体的には2次元チェッカーボード格子上に2重縮退した軌道自由度を配置し、格子の[10]方向と[11]方向で交換相互作用とそれに関与する軌道擬スピン成分が異なる軌道コンパス模型を設定した。これを古典・量子モンテカルロ法、平均場近似法、スピン波近似法、厳密対角化法を用いて総合的に解析を行い、計算手法によらない解析結果を得ることに成功した。これにより二つのフラストレーション効果の競争により、軌道秩序に関して3重臨界点が存在することを示した。また軌道励起状態(軌道波)の分散係について広いパラメータ範囲で解析を行い、その特徴と光による観測の可能性を指摘した。これらの結果は、量子コンピュータ等への応用で注目されている軌道コンパス模型において、有限温度における初めての量子計算である。今後、軌道自由度のある系に対する光照射効果を調べる上で基礎となる結果を得ることができた。
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