2011 Fiscal Year Annual Research Report
多自由度相関電子系における光誘起ダイナミクスの理論
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21540312
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石原 純夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30292262)
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Keywords | 光物性 / 強相関電子系 / 光誘起相転移 / 誘電体 / 相転移 / スピン電荷結合系 |
Research Abstract |
本研究では,スピン,軌道などの多自由度を有する強相関電子系を対象とし、その光誘起相転移現象の微視的機構を明らかにする.特にスピンや軌道秩序,誘電秩序,スピン状態(高スピン状態,低スピン状態等)など,複数の自由度の変化を伴った光誘起相転移現象や光励起現象を対象として取り上げる. 本年度は特に以下の研究を実施した。[1]スピン電荷結合系における、光強度依存性。拡張された2重交換模型を用いて、電荷秩序反強磁性絶縁相に光照射する際の、光強度依存性を詳細に解析した。光励起状態が強度に強く依存することを見出し、弱励起では強磁性金属状態へ、強励起では反強磁性の強まった電荷無秩序状態に移行することが明らかとなった。特に後者の状態は通常の2重交換相互作用の考えでは予想されない状態であり、時間とともにバンド幅が狭くなり、キャリアの運動エネルギーが減少していることが示された。これは強い光のために、一種の反転分布状態が生じているものと解釈された。 [2]電子強誘電体の集団運動と、光による励起。電子が電気分極を担う電子強誘電体において、特にダイマーモット系と呼ばれる低次元有機錯体を対象とした。電気分極の反転が系全体に伝播する集団運動が存在することを理論的に予想し、これが光学電気伝導度で観測可能であることを指摘した。これがダイマーモット相と電荷秩序強誘電相の境界近傍でソフト化することを見出した。またその偏光依存性について解析し、光学電気伝導度の実験と詳細な比較を行うことで、実験により指摘されているピーク構造の解釈を行った。
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