Research Abstract |
1年目に引き続きポジトロニウム分光によるミクロ孔領域の空隙評価を継続した。併せて,水銀圧入法など他の空隙計測手法を用いた評価も行った。これにより,ポジトロニウム(Ps)分光だけがミクロ孔領域の空隙に対して感度が高いことがわかった。 次に,スメクタイト層間をPs分光により調査することを試みた。大気中測定では,オルソPs寿命2.2nsが21%得られた。この寿命は,空隙サイズにして約3Aに相当し,層間におけるオルソポジトロニウム成分と考えられる。真空中で測定すると,層間におけるオルソPs成分に加えて長いオルソPs寿命20nsが8%得られた。この長寿命成分は,ベーキング処理を行うと13%に増加した。得られたPs成分の挙動から,次のことが考えられる。大気中では,水分子が層間に多数吸着しているため,Psの多くは層間に存在し,そこで消滅している。真空を引くことによって層間の水分子が減少するため,放出してくるPs成分が増加する。ベーキング処理を行うと,層間の水分子がさらに減少するため,放出してくるPs成分がますます増加する。以上のことから,層間のPsと放出Psを用いれば,層間を介した物質移行を評価できることが示された。層間のPsと放出Psを用いて,バッチ試験によりセシウムを導入したスメクタイトの評価を行った。ナトリウム型スメクタイトの層間に,イオン交換によってセシウムが導入されると,層間に存在するナノ空孔の実効サイズが増加し,放出Ps成分が発生することがわかった。これは,ナトリウムと比較してセシウムの水和度が低いため,水分子が吸着しにくいためである。以上より,層間のPsと放出ポジトロニウムが,セシウムの層間を介した移行を評価する指標となり得ることがわかった。
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