2011 Fiscal Year Annual Research Report
アルファヘリックス分子鎖における非平衡下での振動励起伝播と超高速X線分光の理論
Project/Area Number |
21540324
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
田中 智 大阪府立大学, 理学系研究科, 教授 (80236588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神吉 一樹 大阪府立大学, 理学系研究科, 助教 (10264821)
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Keywords | アルファヘリックス / 非平衡緩和過程 / 励起伝播 / 長距離相関 |
Research Abstract |
2011年度は、異なる温度の熱浴と両端で相互作用し非平衡状況の下におかれた1次元分子鎖に対し、特に定常状態出の輸送現象に注目し以下のことを明らかにした。 前年度までの研究によって、すでに非平衡定常状態をリウビル演算子のゼロ固有状態として導き出しすことに成功し、分子鎖内での粒子間相互作用が無い場合について熱力学的流れ(エネルギー流、粒子流)の理論解析を行ってきた。一方、1次元分子鎖内の非平衡定常状態における輸送過程を明らかにする上で、粒子間相互作用の効果を明らかにすることは未解決の重要な問題である。本研究において、分子鎖中に複数の励起子が存在する系に対し、非平衡定常流に対する励起子間相互作用の効果を検討した。その結果、分子鎖内にボース粒子が存在する場合に対して、粒子間相互作用の結果熱整流効果が逆転すること、また、斥力相互作用が却って非平衡定常流を促進することを見出した。 さらに非平衡状態では、長距離の相関が発達し、これが自己秩序形成の萌芽となることが知られているが、本研究で扱う系に対して、非平衡定常状態における長距離相関が出現する微視的起源が、共鳴特異性にあることを見出した。また、エネルギー流、粒子流などの熱力学的流れが、定常状態における相関のオーダーによって分類することができることを明らかにした。非平衡状況下で現れる、これらの多様な相関を検出するための非線形X線応答理論を構築することが本研究の大きな目的の一つであり、現在、それを解析するための多時間相関関数の理論解析を開始した所である。 これらの研究は、研究協力者であるTomio Petrosky博士との密接な共同研究によって進められ成果を得てきたが、この研究交流を契機とし、2011年12月にはテキサス大学と大阪府立大学との協働による国際シンポジウムを協働で主催し、本研究の結果が発表された。
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