2011 Fiscal Year Annual Research Report
共鳴非弾性X線散乱による遷移金属酸化物の電子励起の理論的研究
Project/Area Number |
21540331
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
筒井 健二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (80291011)
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Keywords | 強相関系 / 放射線,X線,粒子線 / 物性理論 / 光物性 |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体の不純物置換効果に関連して,母物質のニッケル不純物及びニッケル酸化物の銅不純物に対する共鳴非弾性X線散乱スペクトルの理論解析を行い,不純物サイトの非占有状態の情報が共鳴非弾性X線散乱により得られることを明らかにした.K吸収端共鳴非弾性X線散乱では,銅またはニッケルの1s-4p遷移に対応するエネルギーのX線の吸収・放出を見るものであり,吸収・放出過程の中間状態で1sのコアホールからのクーロン相互作用により3d電子の励起が生じる.置換元素のK吸収端を用いればその元素でコアホールができるため,電子励起は置換元素付近で生じる.Cu及びNiの3d軌道と0の2P軌道を含んだd-p模型を考え,その模型に対する2x2格子のサイズでのクラスター計算を行った.La2CuO4のCuをNiで5%置換したLa2Cu0.95NiO.0504と,La2NiO4のNiをCuで5%置換したLa2CuO.05Ni1.9504に対し,それぞれ置換元素めK吸収端を利用した共鳴非弾性X線散乱の実験が行われているが,そのスペクトルの特徴をよく再現した.すなわちLa2CuO4やLa2NiO4と比べて電荷移動励起に対応するスペクトルの位置等が異なっている.このスペクトル特徴は不純物サイトの非占有状態の性質に起因することが,一粒子励起スペクトルの計算等によって分かった.以上の結果より,置換元素のK吸収端を用いた共鳴非弾性X線散乱が不純物効果の新しい実験手段として有効であることが明らかになった.
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Research Products
(9 results)