2011 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカル絶縁体・超伝導体における不純物効果の理論的研究
Project/Area Number |
21540332
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
古崎 昭 独立行政法人理化学研究所, 古崎物性理論研究室, 主任研究員 (10238678)
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / トポロジカル超伝導 / ヘリカル・エッジ状態 / 近藤効果 / マヨラナ・フェルミオン |
Research Abstract |
2次元の量子スピンホール絶縁体の端にはクラマース対をなすヘリカル・エッジ状態が存在する。時間反転で対称な系では、クラマースの定理のためにヘリカル・エッジ状態は非磁性不純物に対して安定であるが、磁性不純物による散乱は起こり、近藤効果が生じうる。スピン1/2の磁性不純物がヘリカル・エッジ状態と交換相互作用する模型に対して、近藤効果による電流と熱流の温度変化をボゾン化法を用いて計算した。模型がスピン回転のU(1)対称性を持つ場合、すなわちヘリカル・エッジ状態が+x方向へ運動する上向きスピン電子と-x方向へ運動する下向きスピン電子からなり、近藤交換相互作用がSzを保存する場合には、交互に起こるスピン・フリップ散乱が電子の後方散乱を相殺するため、電流のコンダクタンスは常に磁性不純物が無いときと同じ値e^2/hをとる。一方、π^2T/3hで規格化した熱コンダクタンスは、近藤温度付近で最小値をとり、絶対零度で1に回復する。これは、絶対零度で磁性不純物がスクリーンされ非磁性不純物と同等になったために、ヘリカル・エッジ状態に影響しなくなったためと理解できる。 2次元ハニカム格子状のKitaev模型はスピン演算子をマヨラナ・フェルミオン演算子で表現することによって、自由なマヨラナ・フェルミオン粒子のtight-binding模型に帰着し、これは時間反転を破ったトポロジカル超伝導状態であるカイラルp波ペアリング状態と同等であることが知られている。Kitaev模型を時間反転対称な2次元正方格子上の量子スピン模型に拡張し、以下のことを明らかにした。この拡張された模型はKitaev模型と同様に自由なマヨラナ・フェルミオン粒子のtight-binding模型に帰着され、時間反転対称なトポロジカル超伝導状態(class DIII)となり、非自明なZ^2トポロジカル数をもつ。また、トポロジカルに安定なヘリカル・マヨラナ状態が現れる。
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