2010 Fiscal Year Annual Research Report
単分子膜形成技術の応用によるペロブスカイト蛍光体発光機構の解明
Project/Area Number |
21540333
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
池上 敬一 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 副研究部門長 (50356416)
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Keywords | 単分子膜 / LB膜 / 酸化物蛍光体 / ペロブスカイト蛍光体 / エネルギー移動 |
Research Abstract |
本研究課題では、ペロブスカイト蛍光体の発光機構を探るため、ペロブスカイト蛍光体とその近傍に配置した色素との間のエネルギー移動による増感効果もしくは消光効果の有無を明らかにしようとしている。 本年度の一つ目の課題として、予めシード層としてCa_2Nb_3O_<10>ナノシートの単分子膜を吸着させた石英基板上に、ペロブスカイト蛍光体(組成:Pr_<0.002>(Ca_<0.6>Sr_<0.4>)_<0.997>TiO_3)の薄膜を堆積し、その蛍光特性を調べた。励起光源としては、前年度に作製した、楕円鏡付300Wキセノンランプからの光を回折格子で分光して照射する波長連続可変型のものを用いた。発光スペクトルの測定は、回折格子と電子冷却式CCDとを組み合わせたポリクロメータを用いたが、本目的に使用するに際しては制御プログラムの変更が必要であった。アニール前の試料では予想以上に蛍光量子効率が低く、当初の測定条件では励起光源からの迷光が邪魔になっていたが、幾何学的配置を工夫して迷光の混入を小さくすると共に、照射光側にlow-passフィルタをカスケード使用することで、蛍光スペクトルの測定を可能とした。測定の結果、610nm近傍の主ピークのみならず、500,700,830,880nm近傍の各副ピークの形状やそれらの間の強度比が、SrTiO_3単結晶基板上に作製された単結晶薄膜試料の場合と一致していることが分かった。また、石英基板上試料に対する励起光の波長を240-350nmの範囲で変化させた場合にも、主ピーク・各副ピークの形状やそれらの間の強度比に変化は見られなかった。この結果は、励起光の照射により母結晶たるCa_<0.6>Sr_<0.4>TiO_3の価電子帯から導電帯に励起されたキャリアが発光中心であるPrを励起し、f電子軌道間の遷移を経て最終的に発光に至るまでの過程を考える上で、重要な示唆を与える。 二つ目の課題として、石英基板上に堆積したペロブスカイト蛍光体薄膜の上に、さらに有機色素の単分子膜を吸着させて所期の試料系を構成することに取り組んだ。長鎖アルキル基を導入したシアニン色素はカチオン性界面活性剤であり、ポリアニオンであるCa_2Nb_3O_<10>ナノシートと水面上で複合体を形成できることに着目した。2種類のシアニン/ナノシート複合体を水面上に生成させたところ、それぞれLB膜として正常に累積できた。金基板上において赤外反射吸収分光法を適用し、シアニン色素の発色団骨格が膜面に対して平行に近い配向をとっていることを明らかにした。
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Research Products
(6 results)