2009 Fiscal Year Annual Research Report
時間分割中性子散乱測定による磁気秩序形成過程の実時間追跡
Project/Area Number |
21540346
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
元屋 清一郎 Tokyo University of Science, 理工学部, 教授 (60114683)
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Keywords | スローダイナミックス / 磁気秩序 / 中性子散乱 / 時間分割測定 / 実時間測定 |
Research Abstract |
本研究代表者は時間分割中性子散乱法を用いてスピングラスの特徴的性質であるスローダイナミックスの研究を行なってきた。この研究とは別の興味で進めていた重い電子系物質CeIr3Si2の磁気構造に関する研究の過程において、これまでの常識では考えられないスローダイナミックス現象を見つけた。磁気転移温度以下に冷却した後反強磁性ブラッグ点での中性子磁気反射を観測するとその強度(磁気秩序パラメーター)が10時間以上に渡って増加しつづけることが観測された。これまで非平衡、不均一な系特有の現象と考えられてきた長時間緩和現象が3次元規則磁性体において観測されたのはこれが初めてであり、だれも予想だにせず多くの物質の研究でも見落とされてきたと思われる。 本課題ではCeIr3Si2での磁気秩序形成過程を巨視的・微視的に精査するとともに類似の現象を示す物質を探索し、「時間」を含む磁気相転移の研究を展開することを目指している。本年度はこの計画に従って、CeIr3Si2の時間分割中性子散乱実験を行ない(1)温度変化(急冷却)により凍結された非整合相の体積が徐々に減少し、整合相が発達する過程がアレニウス則に従がうこと。(2)非整合相の波数は変化しないことが解った。また物質探索も進め、磁化率測定から磁気構造の長時間変化が推測された三角格子磁性体Ca3Co2O6,希土類化合物TbNi2Si2とPrCo2Si2の中性子散乱測定を行なったところこれらすべてで磁気構造の長時間変化が検出され、その変化の詳細には物質の個性が現れていた。
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Research Products
(4 results)