2010 Fiscal Year Annual Research Report
時間分割中性子散乱測定による磁気秩序形成過程の実時間追跡
Project/Area Number |
21540346
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
元屋 清一郎 東京理科大学, 理工学部, 教授 (60114683)
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Keywords | スローダイナミックス / 磁気秩序 / 中性子散乱 / 時間分割測定 / 実時間測定 |
Research Abstract |
重い電子系物質CeIr3Si2研究の過程で偶然これまでの常識では考えられないスローダイナミックス現象を見つけた。この物質を磁気転移温度以下に冷却後反強磁性ブラッグ点での中性子磁気反射を観測するとその強度が10時間以上に渡って増加しつづけることが観測された。これまでスピングラスに代表される非平衡、不均一な系特有の現象と考えられてきた長時間緩和現象が3次元規則磁性体において観測されたのはこれが初めてであり、だれも予想だにせず多くの物質の研究で見落とされてきた現象である。本課題ではCeIr3Si2での磁気秩序形成過程を精査すると共に類似の現象を示す物質を探索し時間を含む磁気相転移の研究を展開することを目指している。昨年度はCeIr3Si2について詳細な中性子散乱実験を行ない、また数種の類似の振る舞いを示す物質を発見した。本年度は物質探索を継続すると共に磁気構造の長時間変化が試料に含まれる不純物や欠陥によるランダムな磁気相互作用に起因するものか否かを判定することを主眼とした。このため昨年度磁気構造の長時間変化を観測したPrCo2Si2, Ca3Co2O6の磁性原子Pr,Coを非磁性原子で希釈した物質の単結晶試料を作成して、積極的にランダム性を導入した系での磁性の長時間変化を測定する実験を計画した。(Pr0.95La0.05)Co2Si2については磁化測定と中性子散乱実験を行なった。いずれの結果もPrCo2Si2での結果と顕著な差異は見られなかった。Ca3(Co-M)2O6(M=Ga,Mg,Al)については磁化測定のみ完了しているがやはりCa3Co2O6の結果との顕著な差異は見られない。これらの結果からPrCo2Si2やCa3Co2O6で観測されている磁気構造の長時間変化の現象は予期せぬ不純物や欠陥に起因するランダムな磁気相互作用によるものではなく、これらの物質に本質的な磁気的フラストレーションによるものと結論される。
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Research Products
(4 results)