2011 Fiscal Year Annual Research Report
時間分割中性子散乱測定による磁気秩序形成過程の実時間追跡
Project/Area Number |
21540346
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
元屋 清一郎 東京理科大学, 理工学部, 教授 (60114683)
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Keywords | 磁気秩序 / 中性子散乱 / 時間分割測定 / スローダイナミックス / 実時間測定 |
Research Abstract |
重い電子系物質CeIr3Si2研究の過程で偶然これまでの常識では考えられない磁気構造の長時間変化を見つけた。この物質を磁気転移温度以下に冷却した後観測される中性子磁気反射強度は10時間以上に渡って増加しつづける。これまでスピングラスに代表される非平衡、不均一な系特有の現象と考えられてきた長時間緩和現象が3次元規則磁性体において観測されたのはこれが初めてであり、だれも予想だにせず多くの物質の研究で見落とされてきた現象である。本課題ではCeIr3Si2での磁気秩序形成過程を精査すると共に類似の現象を示す物質を探索し時間を含む磁気相転移の研究を展開することを目指した。平成21-22年度はCeIr3Si2について詳細な中性子散乱実験と巨視的測定を行ない磁気構造の時間変化の詳細を明らかにした。更に類似の振舞いを示す数種の物質を発見した。平成23年度には物質探索を継続すると共に時間変化が試料に含まれる不純物や欠陥によるランダムな磁気相互作用に起因するものでないことを明らかにするため磁性原子を非磁性原子で希釈して積極的にランダム性を導入した物質系(Ce-La)Ir3Si2およびCa3(Co-Mg)206の単結晶試料を作成して磁気構造の長時間変化を測定した。中性子散乱は日米協力事業の一環としてオークリッジ国立研究所で行なった。観測された時間変化の時定数は純物質であるCeIr3Si2やCa3Co206のものと顕著な差異は見られなかった。前年度までに行なった巨視的測定の結果も合わせ本研究で観測してきた磁気構造の長時間変化の現象は予期せぬ不純物や欠陥に起因するランダムな磁気相互作用によるものではなく、これらの物質に本質的な磁気的フラストレーションによるものと結論した。
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Research Products
(3 results)