2010 Fiscal Year Annual Research Report
結晶場基底状態に軌道自由度を持つ希土類化合物に出現する部分成分磁気秩序の解明
Project/Area Number |
21540355
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鈴木 和也 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (80206466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綿貫 竜太 横浜国立大学, 工学研究院, 特別研究教員 (30396808)
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Keywords | 磁性体 / 部分成分磁気秩序 / 四極子 / 強相関電子子系 / フラストレーション |
Research Abstract |
本研究では結晶場基底状態に軌道自由度を持つ希土類化合物RTX_5に出現する、4f電子の磁気モーメントの部分成分磁気秩序について、その起源を明らかにするとともに、四極子モーメントと磁気モーメントの間の相互作用の競合による新しいフラストレーションの形態を明らかにすることを目的としている。本年度は超音波による弾性定数測定を新たに製作し、磁場中における超音波弾性定数の測定を容易に行えるようにした。また新規化合物としてNdCu_2Ge_2、DyRhIn_5などの物質群の単結晶育成と物性測定を行った。部分成分磁気秩序は、一軸異方性を持つ化合物において磁気モーメントのc軸成分とab面内成分が別々の独立な温度で秩序化し、その相転移はともに2次相転移である。理論的解析から、磁性元素中の局在電子が結晶場基底状態において縮退した軌道があり、それがc方向とそれに垂直な方向に自由度が分離され、相互作用の大きさが同じであっても自由度の相違から別の温度で独立に相転移を起こしうることを明らかにした。実験ではTbCoGa_5について、中性子散乱実験およびNMR/NQR実験により中間相の秩序状態を明らかにした。一方、NdCu_2Ge_2においては、磁化率測定などから部分成分秩序状態が実現していると考えられるが、弾性定数測定の結果からは弾性定数のソフト化が観測されず軌道自由度は残存してないに見える。磁気比熱から求めた磁気エントロピーの大きさを考慮すると、この物質における結晶場基底状態は1つのクラマース2重項のみであると考えられ、新しいタイプの部分成分秩序が実現していると思われる。NdB_4においてはより大きな単結晶を育成中であり今後この化合物において多極子とその相互作用の競合について明らかにする予定である。
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