2011 Fiscal Year Annual Research Report
結晶場基底状態に軌道自由度を持つ希土類化合物に出現する部分成分磁気秩序の解明
Project/Area Number |
21540355
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鈴木 和也 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (80206466)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綿貫 竜太 横浜国立大学, 工学研究院, 特別研究教員 (30396808)
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Keywords | 磁性体 / 部分成分磁気秩序 / 四極子秩序 / 強相関電子系 / フラストレーション / 八極子秩序 |
Research Abstract |
本研究では結晶場基底状態に軌道自由度を持つ希土類化合物RTX_5に出現する、4f電子の磁気モーメントの部分成分磁気秩序について、その起源を明らかにするとともに、四極子モーメントと磁気モーメントの間の相互作用の競合による新しいフラストレーションの形態を明らかにすることを目的としている。本年度は作製した超音波による弾性定数測定装置をを用いて、NdCu_2Ge_2、DyRhin_5などの磁場中における超音波弾性定数の測定を行った。またTbCoGa_5、DyRhin_5、DyRhin_5の0.3Kまでの磁化率を測定した。部分成分磁気秩序は、一軸異方性を持つ化合物において磁気モーメントのc軸成分とac面内成分が別々の独立な温度で秩序化し、その相転移はともに2次相転移である。理論的解析から、磁性元素中の局在電子が結晶場基底状態において縮退した軌道があり、それがc軸方向とそれに垂直な方向に自由度が分離され、相互作用の大きさが同じであっても自由度の相違から別の温度で独立に相転移を起こしうることを明らがにした。c軸成分が高温側で秩序化したあとより低温ではab面内成分の挙動は物質により異なり、秩序化するもの(TbCoGa_5)、スピングラス的な振る舞いを示すもの(DyRhin_5)、Van Vleck的な常磁性を示すもの(TbRhin_5)に分けられた。これは擬縮重した結晶場基底状態のうちc軸に磁気モーメントを主成分とする状態が磁気相互作用により秩序化し、自由度の大きく、磁気モーメントの小さなab面内成分は時間反転対称性の破れにより基底-重項状態に落ち込むのか、その前に相互作用で秩序化するかの相違によるものと考えられる。一方、磁化率の小さなab面内成分が秩序化するNdB_4はこれらの考察では全く説明できず、多極子の相互作用とその秩序化が大きく関わることが明らかになった。
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