2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540359
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 則雄 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (10169683)
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Keywords | モット転移 / 量子凝縮相 / 光格子 / フラストレーション / 量子ゆらぎ / 強相関電子系 |
Research Abstract |
本年度の研究で、以下の成果が得られた。 (1)冷却フェルミ原子系のクラスター衝突 冷却原子系において近年クラスター衝突の実験が注目を集めている。これに関するダイナミクスと量子効果を研究するため、1次元フェルミ粒子系の数値シミュレーションと理論解析を行った。まず、初期条件として上向き・下向きのフェルミ粒子をそれぞれ離してトラップし、その後、2つのクラスターを衝突させる。このクラスターの衝突において、上向き・下向きフェルミ粒子の反発力が強い(弱い)場合、量子効果が強い(弱い)ことを見出した。このシミュレーション結果を再現する理論模型を提案し、強い相互作用領域での量子効果が波動関数の干渉効果に起因することを明らかにした。また、斥力と引力の違いはクラスタ衝突に影響を及ぼさないことを上記模型を用いて示した。 (2)フェルミ・ボース混合原子系における量子多体効果 フェルミ・ボース混合原子系の実験が最近可能になっている。将来的には、この系における多体効果が系統的に調べられるものと期待される。これを受けて、フェルミ・ボース混合ババード模型の性質を研究した。この系の相関効果を扱うため動的平均場理論と数値繰りこみ群を用いて、基底状態の性質を明らかにした。その結果、混合系に特有の量子多体効果が出現することを見出した。特にフェルミ系が絶縁状態でボース系が超流動となる場合(超固体と呼ばれる)では、ボース粒子の低エネルギー励起を介してフェルミ系の繰りこみ効果が誘発されること、これは状態密度に鋭いピークをもたらすことを明らかにした。このような多体効果がrfスペクトル分光の実験で観測されるものと期待される。 (3)量子クラスタ展開法を用いた超流動転移の理論 冷却原子系でボース粒子やフェルミ粒子の超流動の研究が盛んに行われている。実験的には弱相関から強相関まで自由に系を制御することができるが、理論でこれを包括的に取り扱うことはかなり難しい。ここでは、古くから知られているLee-Yangのクラスタ展開法を用いて超流動の研究を行った。これまで、このクラスタ展開法では超流動発現を見積もる方法がなかったが、本研究で初めて超流動転移温度の系統的な計算方法を導入した。この定式化をさらにフェルミ粒子系にも拡張し、BCS-BECクロスオーバーの研究に、この方法が有力であることを示した。今後の研究で具体的に超流動転移温度を見積もる予定である。
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Research Products
(8 results)