2010 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下精密熱測定によるカゴ状超伝導・熱電物質のラットリングの体積依存性の研究
Project/Area Number |
21540363
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
梅尾 和則 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 准教授 (10223596)
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Keywords | 高圧力 / 比熱 / カゴ状物質 / パイロクロア酸化物 / クラスレート / 超伝導 / ラットリング |
Research Abstract |
結晶中の比較的大きな間隙(カゴ)にさまざまなゲスト原子が閉じ込められたカゴ状物質では,カゴとゲスト原子との相互作用によって特異な超伝導や熱伝導率の抑制など興味深い物性が出現する。それらの物性はゲスト原子の振幅の大きな非調和振動,いわゆるラットリングに起因すると考えられているが,その詳細は明らかになっていない。組成を変えずにカゴ体積のみ減少させられる圧力実験は、ラットリングによるフォノン散乱がカゴ体積にどのように依存するかを調べる最適な手法である。本研究の目的は高圧下における精密な比熱と熱伝導率測定から,(1)パイロクロア酸化物KOs_2O_6の超伝導特性とK原子のラットリングとの関連性を明らかにすること,および,(2)クラスレートのフォノン散乱のカゴ体積依存性を調べ,ガラス的な熱伝導率の起源を明らかにすることである。 上記化合物のラットリングに起因するアインシュタイン比熱の圧力変化を高精度で測定するため,無試料のアデンダと有試料のアデンダの比熱を同時測定することで,試料に加わる熱量を直接測定することなく試料の比熱の絶対値を求めることができる双子型交流法熱量計を考案し,その設計とテストを開始した。また,(2)の研究に関連し,希土類元素を含むクラスレートEu_8Ga_<16>Ge_<30>の特異な強磁性とラットリングとの関連を調べた。この化合物は強磁性秩序を示すT_C=36Kより低温のT^*=24Kでも電気抵抗と磁化は異常を示す。T_Cでの比熱の跳びが分子場計算から期待される値の30%程度しかないことから,振幅変調磁気構造が予想されている。加圧してラットリングを抑制させるとT^*が抑制され,通常の強磁性になると期待された。そこで,この化合物の11GPaまでの電気抵抗と磁化を測定した結果,11GPaの圧力下でもT^*は残存しており,T^*はカゴの体積に鈍感であることがわかった。
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Research Products
(9 results)