Research Abstract |
ごく最近発見された30Kという高温で磁気秩序を示す近藤半導体CeT_2Al_<10>(T=Ru,Os,Fe)について超強磁場を含めたマクロな熱・輸送特性,中性子散乱やNMRによるミクロな測定手段を用いて広範な研究を行った。この系におけるCeは局在と遍歴の狭間にあり,Tを変えること,あるいは圧力を加えることにより,容易に局在と遍歴の間を行き来できる。そういう意味でこの系は磁性の起源を探る上でも最適な系である。また近藤半導体としてははじめても磁気秩序を示す系であり,しかもその転移温度は異常に高い。当初この転移が磁気的なものではないというNQRの報告があったが,基底状態はスピン一重項であると予想して研究に取りかかった。La添加により転移温度が減少すること,a軸方向に磁場をかけたとき50Tに臨界磁場が存在することから,秩序の起源が磁気的なものであることを示した。非弾性中性子散乱の結果はこれを支持したが,しばらくして磁気秩序であることがμSR,中世史解説実験からわかった。しかし,この系の異常な磁気的性質を説明するには,スピンー重項基底状態が不可欠であると提案している。また,輸送特性が大きな異方性を示すことから,この系はac-2次元面がc軸方向に積層する2次元物質であることを見出した。電気抵抗は高温では近藤半導体的なふるまいを示すが,転移温度以下で大きく上昇した後低温では金属的なふるまいを示すことが報告されていたが,超強磁場での磁気抵抗測定からSdH振動を観測し,基底状態はフェルミ面を持った金属であることを示した。また,H//c,H*~4Tでスピンフロップ転移のような異常を発見したが,NMR測定から,磁化率が最小のb軸方向に反強磁性モーメントが向くという非常に奇妙なスピンフロップ転移であることを示した。
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