2010 Fiscal Year Annual Research Report
不均一超流動ヘリウム3における奇周波数状態の線型応答に関する理論的研究
Project/Area Number |
21540365
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
東谷 誠二 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (70304368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 克彦 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 名誉教授 (90034743)
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Keywords | 超流動ヘリウム3 / 奇周波数クーパー対 / 局所状態密度 / アンドレーエフ束縛状態 |
Research Abstract |
本年度は、超流動ヘリウム3の表面近傍に現れる奇周波数クーパー対の理論的研究において以下のような成果を得た。 超流動ヘリウム3のB相では、表面付近の局所状態密度が、アンドレーエフ束縛状態の形成に起因した特徴的な低エネルギー構造をもつ。東工大の低温実験グループは、その低エネルギー表面状態密度を横波音響インピーダンス測定によって観測し、超流動ヘリウム3B相の表面に実際にアンドレーエフ束縛状態が存在することを実証した。一方、最近の理論的研究の進展から、超流動ヘリウム3B相の表面付近には、並進対称性の破れに伴って、奇周波数対称性を有する特殊なクーパー対が形成されると予想されるが、その存在は現在のところ観測されていない。本研究では、奇周波数クーパー対と超流動物性との関連を解明することを目的として、超流動ヘリウム3B相の表面奇周波数クーパー対振幅に関する詳細な解析を行い、表面奇周波数クーパー対振幅のエネルギー依存性とアンドレーエフ束縛状態を反映した局所状態密度の低エネルギー構造に極めて密接な相関があることを明らかにした。特に、ゼロエネルギー極限では、両者の値が完全に一致することを解析的に証明した。横波音響インピーダンスの周波数依存性には、有限のゼロエネルギー状態密度を反映した構造が見られる。この実験データは、超流動ヘリウム3B相の表面近傍に奇周波数クーパー対が実際に存在していることを強く示唆していると言える。
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