2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540382
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大鳥 範和 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (20272859)
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Keywords | 熱伝導率 / 分子動力学法 / 溶融塩 / フォノン / 空隙 |
Research Abstract |
液体アルゴンについて、通常のLennard-Jonesポテンシャルから引力項を除いて斥力項のみとした、いわゆるWCAポテンシャルを用いて、動的構造因子を評価し、音響フォノンの伝播モードに対応するブリルアンピークから得られるフォノン速度と、そのピーク幅から得られる音響減衰係数について、それぞれ温度、数密度、原子質量m、および充填率ηの依存性を調べた。その結果、フォノン速度が先ず原子質量に関して-1/2乗に比例することを見出した。この結果は、研究代表者が提唱している熱伝導率の表式(平均原子質量の-1/2乗、数密度の2/3乗、および充填率の3/2の積)に直接対応することを示している。また、数密度にほとんど依存せず、充填率には1-ηの-1/3乗に比例することを見出した。温度に関しては弱い依存性を示した。今後、定積比熱に関して同様に各依存性を調べることによって、平均自由行程に関する知見を得ることができると期待される。 溶融アルカリフッ化物混合系について、研究代表者が提唱している熱伝導率の表式から大きく外れる系をいくつか見出した。その中のLiF-KF系について、陰イオン周囲の配位環境を原子質量と分布とポテンシャル場および空隙の分布の各異方性の観点から調べた。その結果、提唱されている熱伝導率の表式からの偏差は、それぞれの異方性の独立した効果ではないことが明らかになり、これらの共同効果であることが示唆された。今後さらに、本手法をWCAポテンシャルを用いた混合系に適用することによって、ポテンシャル場の効果から独立して、空隙の分布の異方性のみの観点から調べることが可能となり、熱伝導機構における空隙の効果を明らかにできると期待される。
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