2012 Fiscal Year Annual Research Report
光学格子上のボーズ・フェルミ混合原子気体が示す特異な静的及び動的性質
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21540410
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
森 弘之 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (60220018)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 原子気体 / ボーズ・フェルミ混合系 / Mott転移 / 光学格子 / 量子モンテカルロシミュレーション |
Research Abstract |
解析手法および数値手法の開発を基礎とした、光学格子上に閉じ込められたボーズ・フェルミ混合原子系が示す局在状態の成立条件の解析を行った。とくに混合系に特徴的な現象に注目し、その発生原因についてくわしい解析を目指した。 とくに実験において観測されている、フェルミ粒子の導入によるボーズ粒子系のMott転移について、これまで提案されている機構とは異なる新たなシナリオを提案し、その確認のために数値シミュレーションを行った。 近似を用いないハミルトニアンを出発点とし、光学格子上の系に関するこのハミルトニアンに対して通常適用される強結合近似を見直した。それにより、従来無視していた項が上記の転移に関与しているとの見通しがたったので、その項を含めた強結合近似ハミルトニアンを用いて数値シミュレーションを行った。 技術的な理由から、実験は3次元系で行われていたものの、この数値シミュレーションは1次元ボーズ・フェルミ混合系に対して実施した。シミュレーション技法としては、世界線を用いた量子モンテカルロ法、およびグリーン関数量子モンテカルロ法を採用した。特に後者の精度は高く、信頼の置ける結果が得られた。ボーズ粒子とフェルミ粒子の相互作用は実験に合わせて引力型とした。 数値計算の結果、超流動状態にあるボーズ粒子系にフェルミ粒子を導入することにより、徐々にボーズ粒子系の超流動密度が低下し、ある割合のフェルミ粒子を導入するとボーズ粒子の超流動性が消失してMott転移を起こすことが確認された。これは他に提案されていたこの現象の機構とは異なる新たな機構の可能性を示すもので、高い評価を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに目的に沿った研究がほぼ順調に進んでいる。当初の計画では、これまで用いていたシミュレーションコードを多用して計算を進めていく予定であったが、より高精度のシミュレーション技法が必要となり、検討を加えた結果、新たにもう一つのシミュレーションコードを開発することにした。 2番目のシミュレーションコードとしては、数年前に1次元系を対象として開発されたグリーン関数量子モンテカルロ法を採用することにした。幸いフランスの知人より、技法に関する詳しい知見を得ることができた。 若干の時間はかかったものの、後者のシミュレーションコードも完成し、より詳しい数値解析を行うことが可能になった。このコード開発の時間は当初見込まれていなかったものであり、その点では計画に遅れが生じた。しかし、精度の良さから計算時間が大幅に短縮できたため、結果として当初の予定とほぼ変わらない進度で研究が進められている。また、数値計算以外の解析も順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析はほぼ予定通りであるが、一部に予想していなかった現象の発見もあり、その解析に計画にない時間を割きたいと考えている。ただしその方向性はすでに定めてあり、H25年度には解析は終了すると考えている。また、この計算からの発展として、合成磁場の影響についても検討したい。 本来電気的に中性の原子は、(分極等の影響を除いて)その運動が磁場の影響を受けることはないため、ホール効果等の磁場に基づく現象は観測されることはない。しかし仮想的なゲージ場を人為的に作成することができるようになり、磁場中の運動を再現することが実験的に可能になった。 この合成磁場の影響を本研究のメインテーマであるボーズ・フェルミ混合系について検討することが今後の発展的課題として浮かび上がる。本研究課題を今年度で終えるにあたり、この方向への発展を念頭に置きながら、予想される興味深い現象等を検討していきたい。 そのほかの課題については、計画に沿って解析を進めていく予定である。シミュレーションコードのさらなる効率化も行い、より大きな系で精度の高い計算を行いたい。
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Research Products
(5 results)