2009 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリア氷核タンパク質と昆虫不凍タンパク質の類似性および相違性の計算科学研究
Project/Area Number |
21540423
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
灘 浩樹 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (90357682)
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Keywords | 氷核タンパク質 / 不凍タンパク質 |
Research Abstract |
平成21年度は、氷核バクテリア水溶液からの氷の結晶成長実験研究を実施し、氷の成長形観察および成長速度測定を行った。バクテリア濃度1mg/mlおよび2mg/mlの水溶液を実験に用いた。温度は過冷却度0.05~1.0℃の範囲で行った。氷ベーサル面成長速度の測定には、マッハツェンダー干渉計を用いた。 本実験研究の結果、氷核バクテリアは氷ベーサル面の成長を強く抑制し、それ以外の面の成長を著しく促進した。すなわち、氷核バクテリアは氷の成長形を極めて薄い円盤もしくは六角樹枝へと変えていく添加物であることがわかった。本研究で発見された氷核バクテリアの氷結晶成長へ及ぼす効果は、氷核タンパク質が氷ベーサル面へ吸着したことを反映したものと考察される。これより、氷核タンパク質は氷ベーサル面の格子構造とマッチする原子配列構造を持つものと考察される。 また、昆虫不凍タンパク質の氷表面吸着エネルギー計算研究を実施した。吸着エネルギー計算は、6サイト水分子モデル及びCHARMM力場パラメータを用い、氷ベーサル面に対して実施した。その結果、昆虫ターンパク質のスレオニン残基整列面が氷ベーサル面に吸着した状態が、エネルギー的に最も安定になることがわかった。本研究結果は、昆虫不凍タンパク質が氷ベーサル面に吸着するという実験結果と一致する。また、氷核タンパク質も氷ベーサル面に吸着すると考えられるため、氷核タンパク質と昆虫不凍タンパク質が類似した三次元構造を持つ可能性を示唆している。 しかし、氷核バクテリアの実験では昆虫不凍タンパク質の場合のような氷の成長抑制は観察されなかった。以上より、タンパク質構造や氷との相互作用特性は両タンパク質で異なる部分があると考えられる。
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Research Products
(4 results)