2010 Fiscal Year Annual Research Report
バクテリア氷核タンパク質と昆虫不凍タンパク質の類似性および相違性の計算科学研究
Project/Area Number |
21540423
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
灘 浩樹 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門., 主任研究員 (90357682)
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Keywords | 氷核タンパク質 / 不凍タンパク質 |
Research Abstract |
平成22年度は、昨年度に引き続き氷核バクテリア水溶液からの氷の結晶成長実験を行うことにより、氷核タンパク質(INP)が吸着する結晶面指数および氷成長形態への作用機構の研究を実施した。本研究の結果、INPは氷{0001}ベーサル面へ選択的に吸着する可能性が極めて高く、そのためにベーサル面に垂直な方向の成長が著しく抑制されることがわかった。一方、INPはベーサル面に平行な方向の成長は著しく促進するが、その原因はベーサル面の成長抑制にともなう結晶化熱発生量の減少およびINPによる水分子配列秩序構造化の促進のどちらか(あるいは両方)であることがわかってきた。本研究結果のフェーズフィールドモデル計算による検証も行い、INPの氷結晶成長への影響の理解は深まってきている。 また、昨年度実施した昆虫不凍タンパク質(AFP)の氷表面吸着エネルギー計算に引き続き、本年度はAFPが吸着した氷成長界面の分子動力学(MD)シミュレーション研究を実施した。氷{10-10}プリズム面-水界面に対してシミュレーションを実施した結果、AFPのスレオニン配列面が界面の氷側に接触した吸着構造は周辺に氷が成長しても安定なままであることがわかった。以上の研究を実施したことより、氷成長界面へのAFP吸着構造およびそのINPの場合との違いが判明しつつある。 さらに、高圧力下での氷の成長形態を調べるMDシミュレーション研究を実施した。その結果、実験と同様にプリズム面を平坦ファセット面として持つ六角板成長形態が自発的に現れた。AFP存在下における氷成長形も同様な六角板形態である。したがって、今回実施したMDシミュレーションの方法は、AFP存在下での成長形態および分子レベル成長制御機構の異方性の解析にも利用できるものと思われる。
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Research Products
(10 results)