2010 Fiscal Year Annual Research Report
地殻の微細不均質性の新しいイメージング法および物性量の推定法の開発とその応用
Project/Area Number |
21540425
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
蓬田 清 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (70230844)
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Keywords | 微細不均質性 / 高周波地震波 / 散乱理論 / 数値実験 / イメージング |
Research Abstract |
微細不均質構造をもつ媒質での波動伝搬の数値的・理論的な研究として、これまでの空隙をランダムに分布させた媒質から低速度あるいは高速度の含有物を不均質性とする媒質に拡張し、そこでの減衰および分散の周波数依存性を詳細に考察した。固体地球科学においては、不均質性は空隙のような速度が背景媒質に比べて遅くなるばかりでなく、正負のどちらの擾乱もある媒質を想定するが、他分野では非弾性内部減衰効果と同じく遅延のみがある不均質性媒質での研究のみ詳細に行われてきた。 速度の遅い含有物を含む媒質では、減衰も分散も十分な精度でFoldyの散乱モデルと一致し、因果律に基づく減衰と分散の相互関係であるKramers-Kronigの関係式も確認された。一方で、速度が速い含有物を含む媒質の場合、Foldyモデルと一致するが、分散では低周波領域の速度が速くなり、Kramers-Kronigの関係式と全く相容れない。不均質性が波動伝搬の位相を進めるため、通常の因果律とは時間のずれが逆になる、この符号を交換した減衰・分散関係が成り立つという非常に重要な結果が得られた。 しかし、それでも高速度含有物の媒質では、そこらの分散関係において若干のずれが生じる。含有物の速度を固定して、密度を変動させた詳細な検証の結果、前方散乱が支配的な条件下でそのずれは小さくなった。高速度の不均質性からの散乱波でも前方散乱の方向からはずれるにつれて位相が遅れていき、時間の符号を逆にした減衰・分散関係と食い違う結果を生じさせる。このような二次的なずれの効果と要因も判明した。 その他に、日本列島付近の表面波解析による大規模スケールの不均質性のマッピングの成果を出版した。特に、データが十分でないオホーツク海周辺のロシア極東地域の構造と、北海道周辺での沈み込むスラブの形状を精度よく求めたことは重要である。
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