2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540444
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
大迫 正弘 独立行政法人国立科学博物館, 理工学研究部, グループ長 (60132693)
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Keywords | 熱伝導率 / 熱拡散率 / 比熱 / 高圧力 / マントル物質 / 川井型装置 |
Research Abstract |
地球のマントルを構成する物質の熱伝導率と熱拡散率、さらには比熱を高圧力高温の条件下での測定実験を継続した。測定は短い円柱状試料による一次元のパルス加熱法を適用し、多アンビル(川井型)装置により加圧して行った。まず、沈み込み帯で蛇紋石と並んで重要なタルクの熱的性質を圧力5.3Gpa。温度900Kまでの実験結果によりまとめた。天然のタルクは多結晶の選択配向により弾性波速度に強い異方性を示し、熱伝導率・熱拡散率とも同様であった。熱伝導率・熱拡散率の値そのものはカンラン石と同程度で蛇紋石にくらべかなり大きく、タルクは蛇紋石と違い沈み込み帯の熱輸送で特別な振る舞いを示さないと考えられる。いっぽう、熱伝導率・熱拡散率の圧力依存性が小さい(圧力が上がるにつれて熱拡散率はやや減少、熱伝導率はやや増加)という点で主要マントル鉱物と著しく異なる様相を示す。タルクの比熱は圧力の上昇とともに増加する傾向にあり、このような特異性は蛇紋石と同様で、水酸基の特異な振動モードによると考えられる。つぎに、測定圧力範囲を伸ばすべく試料の小型化を図った。試料の直径3mm、厚さ0.7mmとし、これを一辺14mmの圧力媒体に仕組んで試料セルとし、切り落とし長8mmのアンヴィルを用いて実験を行った。天然のザクロ石単結晶について圧力15Gpaまで加圧し測定したところ、熱拡散率がやや小さくでたものの、これまでの大きい試料による値とつながる結果が得られ、試料をそのままこの大きさにしても特別なことをせずにデータが得られることがわかった。ただ、この大きさの試料を用いる実験となると、いままでのような手作業では試料セルをつくるのは難しくなり、また加圧初期の予期しない変形を招き系統誤差を大きくする危険がある。試料内各部分の位置決めが重要な鍵となるので、そのための穴開け機械を援用しまた治具を工夫するなどしてセルの作成を行った。
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