2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540457
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
蒲地 政文 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 部長 (00354548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 陽介 気象庁気象研究所, 海洋研究部, 研究官 (60343894)
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Keywords | 北太平洋中層水 / 低塩化 / トレンド / アジョイント法 / 逆追跡 / データ同化 / 海洋再解析 / 黒潮続流域 |
Research Abstract |
気象研究所海洋データ同化システムによる再解析データの解析から、北太平洋の亜熱帯域に広く分布する北太平洋中層水(NPIW)に低塩化トレンドが見られることが明らかになり、特に日本東方の親潮・黒潮混合域でそのトレンドが大きいことがわかった。この海域へ流入、流出する海水と塩分の収支を解析したところ、黒潮の流入量が長期的に減少していることが、この低塩化トレンドの主な原因になっていることがわかった。また、日本南岸でのNPIWの低塩化と親潮・黒潮混合域の関連を調べるため、アジョイントモデルを用いて、海水粒子の移動を、時間をさかのぼって追跡する解析を行った。粒子の一部は、亜熱帯循環内部の流れをさかのぼりゆっくり北東方向へ移動した後、黒潮続流域で頻繁に発生する傾圧不安定擾乱に伴い、黒潮続流を南から北へと横切ることがわかった。計算の結果、日本南岸のNPIW付近に分布していた粒子の5~10%が、10年前には黒潮・親潮混合域に存在していた。また、一部の粒子については、さらに親潮や津軽暖流に運ばれ、噴火湾、オホーツク海、ベーリング海、日本海まで達していた。この結果から、日本東方沖での低塩化トレンドが黒潮続流を南に横切って10年程度で日本南岸に達するという経路により、少なくても日本南岸の低塩化トレンドの30%程度が説明されることが示唆された。のこりの70%程度については、より時間をかけて、黒潮続流が消滅する北太平洋東部まで大きく迂回して日本南岸まで到達する経路も考えられるが、モデルの渦表現が不十分であるために、黒潮を横切る粒子の量が過小評価されている可能性もあり、今後、より高解像度のモデルによる調査が必要である。
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