2010 Fiscal Year Annual Research Report
高解像度大気海洋結合モデルを用いた熱帯の季節内変動と台風の季節予測に関する研究
Project/Area Number |
21540459
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
羅 京佳 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, 主任研究員 (70358753)
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Keywords | 高解像度大気海洋結合モデル / 熱帯低気圧 |
Research Abstract |
平成22年度は、高解像度大気海洋結合モデルの長期積分(25年)を行った。またモデル出力から熱帯低気圧を抽出するプログラムの修正を行った。高解像度モデルの積分には時間がかかるため、その間低解像度モデルの熱帯低気圧抽出と、大規模場の解析を行った。 過去の低解像度モデルで使用されている熱帯低気圧の判定条件は現実の熱帯低気圧に比べて緩い傾向が見られる(Walsh 1997)。そのため、弱い擾乱が熱帯低気圧と判断され、発生頻度が人為的に増加されている場合がある。このような判定条件を高解像度モデルに適用した場合、熱帯低気圧の頻度を過大評価する恐れがある。そこで、本研究ではWalsh(1997)を参考にして高解像度モデル用の判定条件と閾値を定めた。一方、低解像度モデルとの比較を行うため、低解像度モデル用の閾値も定めた。低解像度モデル用の閾値は高解像度モデルに比べてやや判定条件が甘いが、人為的に発生頻度を増やすことのないようWalsh(1997)の結果を参考にした。この判定条件を低解像度モデルの出力に適用した結果、抽出された熱帯低気圧の発生数は観測値に比べて過小評価であった。また、モデルの熱帯低気圧の強さは観測値に比べてかなり弱かった。これらの結果は過去の低解像度モデルによってシミュレートされた熱帯低気圧の傾向と整合的であった。 次に、熱帯低気圧の発生に適切な大規模場(海面水温、鉛直シア、中層の相対湿度、下層の相対渦度)について低解像度モデルの出力と観測値で比較を行った。その結果、低解像度モデルはインド洋の海面水温に正のバイアスが見られるものの、おおむね観測値と同様な傾向を持つことが分かった。この結果は、低解像度モデルは熱帯低気圧の発生に必要な環境場をおおむね再現できていることを示している。 高解像度モデルに関しては、長期積分中であったため、適宜出力結果の確認を行った。また、モデルで発生したいくつかの熱帯低気圧について、その鉛直構造や、海洋の応答について観測との比較を行い、非常に現実的な熱帯低気圧の構造と海洋の応答が高解像度モデルでシミュレートされていることを確認した。
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Research Products
(5 results)