地形・地質が地震動に与える影響の解明

2012 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 21540467
• Research Institution: Yamagata University
• Principal Investigator: 川邉 孝幸 山形大学, 教育文化学部, 教授 (00214685)
• Project Period (FY): 2009-04-01 – 2014-03-31
• Keywords: 地震動 / 表層地質 / 地震被害 / 液状化

Research Abstract

本研究では，大きな地震が起きた際に，表層地質および地形によって特有の被害が発生するが，表層地質による被害について，被害を起こした表層地質の堆積環境発達史と堆積体としての物性的特徴，特に震動特性の２つの側面から被害の発生要因を解明し，同様な地質条件の場所で今後起こりうる地震の際に被害の予防対策になることを目的としている．
平成24年度は，昨年度に引き続き，家屋に被害ができた新潟県柏崎市東長崎地内において，深度ごとに３本ある観測井の伸縮計のベースに残った地震動の変位記録の解析を深め，表層地質と地震の変位記録との関係を解析するとともに，活断層上での直下型地震の被害にあう可能性のある村山市白鳥地区の扇状地上において，層相による扇状地の堆積相を解析し．堆積環境の違いによる地震動の違いの基礎的調査研究をすすめた．
さらに，2011年東北地方太平洋沖地震による仙台平野沿岸部における調査をおこない，津波襲来前における表層地質による地表変状に関する調査をおこなった．調査では，津波被害によって建屋が流出して露出した基礎部分の観察によって，表層が砂丘堆積物や自然堤防堆積物が厚いと思われる部分では基礎には基本的に変形が無い一方で，元々砂丘間低地の湿地であったと思われる場所を造成した場所では，周囲の田畑の沈下とともに，基礎が傾いたり，基礎が割れて割れ目が開いているものがあることも明らかになった．表層地質による被害は，津波被害が甚大であったために，見逃されていて，復興計画においても，ほとんど考慮されていない．しかし，表層地質の違いによる地震動の違いと表層変形を考慮することは復興計画において重要であり，早急に実態を正確に明らかにする必要がある．

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

新潟県柏崎市新橋地盤沈下観測井における調査・研究では，深度の異なる３本の観測井における地盤観測用ダイヤルゲージによる傷の解析によって，表層地質と地震動との関係について，概ね解析することができた，
また，2011年3月11日の平成23年（2011年）東北地域太平洋沖地震の被災地の一つである仙台市～岩沼市の沿岸部において，津波被災前の地質災害についての調査をおこなた．
仙台平野の沿岸部においては，津波で流された住宅構造物の基礎を基準に，津波襲来前の地震動によって起こった地表の変状の調査をおこない，旧版地形図による土地利用に基づく堆積環境および国土地理院発行のDEM数値地図をもとに解析した地形変化をもとに表層地質と地表変状との関係について概査をおこなった．
その結果，石川県輪島市道下地区および山形盆地内における表層地質調査の進捗が遅れている．

Strategy for Future Research Activity

研究計画では本年度は研究の最終年度で，まとめを中心とする計画であるが，仙台平野における調査研究は，同平野における被災地復興に重要な意味をもつと考えられるので，本研究課題の趣旨の範囲内で，研究計画における調査対象地を，仙台平野沿岸部に移して平成25年度の調査・研究を継続しておこなうこととする．仙台平野の調査・研究を含めて，最終年度のまとめをおこなう．
新潟県柏崎市新橋地盤沈下観測井に関しては，地震動の観測期間において，十分な違いを得るだけの強震動が得られなかったので，より精度の高い観測機器を借用して深度ごとに３本ある観測井の個々について，固有周期を正確に測定して，個々の地盤沈下観測ゲージのプレートについた傷の解析結果に基づく表層地質と地震動との関係の解析に生かす予定である．
仙台平野沿岸部における調査は，具体的には，津波で流された集落等で，住宅基礎のレーザー測量をおこなって，それらの変位量を測定するとともに，旧版地形図による土地利用に基づく堆積環境および国土地理院発行のDEM数値地図をもとに解析した地形変化をもとに解析した表層地質の堆積環境の実態を簡易ボーリング調査等によって明らかにして，地表変状と表層地質との関係を明らかにし，地震動と表層地質の違いによる地表変状との関係を明らかにする．
この仙台平野における調査結果を含めて，表層地質と地震動との関係について，本研究のまとめをおこなう．