2011 Fiscal Year Annual Research Report
フラッシュ洪水による射流領域の堆積作用およびその地層記録への保存ポテンシャル
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21540474
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
前島 渉 大阪市立大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20173700)
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Keywords | 射流 / 反砂堆 / 形態 / 水路実験 |
Research Abstract |
近年の研究において、射流領域の流れによる堆積物が地質学的な時間スケールにおいては決して稀なものではなく、いくつかの地層では射流領域の流れが地層形成に大きく関係していたことが明らかになってきた。これらの地層には射流領域の砂床形である反砂堆によって形成された、様々なタイプの内部層理が見られる。いっぽう反砂碓の形態上の多様性については、従来の水路実験においてはほとんど注目されてこなかった。平成23年度の研究では、反砂堆の形態上の多様性を明らかにするための水路実験をおこなった。 実験水路に作られた反砂堆は形態的に同一ではなく、多様である。波長の長い、きわめてゆるやかな波形をもつものから、波長が短く、起伏の大きいものまで、バリエーションに富む。反砂堆の波高/波長でみると、0.014~0.067の範囲で連続的な分布を示す。これまで,現世野外での研究においても、実験研究においても、反砂堆の波高/波長に着目した研究例はない。波高/波長の値が広い範囲に連続的に分散することは、何らかの水理因子が反砂堆の波高/波長を規制していることを示唆する。反砂堆の波高/波長と流速、水深、フルード数との関係をみてみると、流速との間には目立った関係はみられないが、水深およびフルード数との間には強い相関関係が認められる。すなわち、水深が深くフルード数が小さいほど波高/波長の小さな、より緩やかな波形を示す反砂堆が形成され、水深が浅くフルード数が大きいほど波高/波長の大きな、相対的に振幅の大きな波形の反砂堆が形成される。地層中に見出される反砂堆起源の堆積構造をこのような観点から検討することにより、堆積時の水力プロセスをかなり詳細に議論することができるにちがいない。このことは、堆積システムの復元にあたって重要なツールとなり得る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地層中のフラッシュ洪水による射流領域の堆積物については、その背景要因の解明が進み、射流堆積作用による内部層理の多様性をかなり的確に認定することが可能となっている。また、地層から得られた情報を評価するための水路実験においても成果があがっており、地層記録に対して堆積時の水力プロセスをかなり詳細に議論することができる段階になってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
水路による射流領域および射流・常流境界領域の流れの実験研究を引き続き進め、砂床形の多様性を水理学的観点から議論する。また、地層中の射流領域の堆積物をさらに詳細に検討し、堆積相の細分を試みる。とくに反砂堆起源の内部層理に着目して、それらの規模や形態からタイプ分けをおこない、射流領域の流れによる堆積相のスペクトラムを確立する。さらに、実験研究の成果を地層中の射流領域の堆積物に適用し、堆積時の水力プロセスを定量的に議論できことを目指す。
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