Research Abstract |
本研究は,縞状珪藻土層に挟在される重力流堆積物を対象として,その分布や堆積過程の解明,そして縞状珪藻土の年縞および珪藻化石から推定される湖の環境変化との関係を明らかにすることを目的としている.今年度では,(1)全重力流堆積物の確認,(2)重力流堆積物の詳細な堆積相区分とその側方変化の把握,(3)粒度分布の把握,(4)珪藻化石の種同定,(5)重力流のモデル化と逆解析を行った. (1)では,蒜山原層下部のほぼ全層準の柱状図の作成を完了した.その結果,下位から土壌堆積物,火砕流堆積物を経て,湖へと変化していったことが明らかになった.重力流堆積物の挟在間隔は,崩壊起源が70年前後,洪水起源が150~300年前後であり,これらのイベントがこのような間隔で発生していたことが明らかになった.(2)では,崩落起源重力流堆積物(5層)と洪水流起源重力流堆積物(4層)についてそれぞれ最大で300m追跡し,その連続性と側方変化について明らかにした.これらのうち,洪水流起源重力流堆積物について,(3)粒度分析・薄片観察を行い,粒度および詳細な堆積構造の側方変化を明らかにした.(4)の珪藻化石種の同定に関しては,連続的に採取した珪藻土試料を用いた.これは前年度調査で採取した層準より下位の層厚約10mの層準に相当する.これらについて珪藻化石群集組成をおおまかに把握した.今年度採取した試料には,、Puncticulata属が圧倒的に優占していることが明らかになった.(5)では,粒度分析で得られた情報を用い,混濁流の流速・流厚・濃度を境界条件として,1次元定常混濁流モデルを用いて,各地点での観測データが再現されるような境界条件を探索した.しかしながら,現状では最適解は得られていない.その原因としては,モデルで使用した巻上げ係数の影響があり,今後,文献調査や水槽実験により,湖での混濁流の堆積・侵食現象に適応した経験式を取り入れる必要が明らかになった.
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