2010 Fiscal Year Annual Research Report
西南日本沈み込み帯域マントルの岩石・化学的特徴とその進化過程に関わる火成活動
Project/Area Number |
21540495
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
芳川 雅子 京都大学, 理学研究科, 教務補佐員 (00378605)
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Keywords | マントル捕獲岩 / 背弧リソスフェア / 開放的融解 |
Research Abstract |
島弧・大陸弧(火山弧)のマグマに含まれているマントル捕獲岩は、現在の沈み込み帯域の上部マントルの断片であるため、これらの岩石・化学的特徴を明確にする事は、島弧・大陸弧での火成活動の変遷や多様性の解明の基礎となる。しかしながら大陸内部や海洋島といった他のテクトニックセッティングにくらべて、火山弧マグマ中の捕獲岩の報告は極端に少ない。さらに上部マントル物質は、マグマの形成過程や多様性の解明に有効な液相濃集元素(Sr・Nd・Pbなど)の濃度が低いため、火成活動による物質分化や年代の解明に一般的に用いられる、Sr-Nd-Pbといった同位体組成の蓄積が特段遅れている。そこで本研究では、九州玄海灘沖の黒瀬に産するマントル捕獲岩を対象とし、構成鉱物の微量元素および同位体組成を求め、沈み込み帯域のマントルの化学的・同位体的特徴を観察し、これらの進化過程を明確にすることと島弧火山岩や深成岩類との成因関係を明確にすることを目的とする。昨年度までの研究によって、黒瀬マントル捕獲岩は以下で示すプロセスを被った、背弧下のリソスフェリックマントルの断片であり、日本海の拡大以後の島弧火成活動による化学・同位体組成変化を記録していることがわかった。すなわち(1)大陸リソスフェリックマントルの、日本海の拡大に関わるMORB的アセノスフェリックメルトの流入による、部分溶融、(2)沈み込むスラブ由来のメルトもしくは流体の流入による部分溶融、(3)島弧ソレアイトによる溶融後マントルへの交代作用(成果はすでに印刷されている;Yoshikawa et al., JMPS, 2010)である。さらに、非常に肥沃したSr-Nd同位体組成を示すマントル捕獲岩も発見しており、これらの同位体組成は日本海にあるUlreung島・Dog島の火山岩類のものと一致しており、成因関係が存在する可能性がある。
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