2010 Fiscal Year Annual Research Report
マンガンクラスト中の微量元素同位体比から解き明かす海洋、大気循環の変遷
Project/Area Number |
21540503
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
天川 裕史 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (60260519)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田副 博文 日本大学, 文理学部, 助手 (60447381)
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Keywords | 地球化学 / マンガンクラスト / ネオジム同位体比 / TIMS / 太平洋 / インド洋 |
Research Abstract |
本研究の目的は太平洋およびインド洋のマンガンクラスト中のネオジム(Nd)および鉛(Pb)同位体比の時系列データからグローバルスケールでの古海洋、古大気循環像を新たに構築することである。本年度は北西太平洋(パレスペラ海盆)より採取したマンガンクラスト試料のNdとPb同位体比の分析およびインド洋の海水試料の処理を進めた。 マンガンクラスト試料のPb同位体比(^<206>Pb/^<204>Pb、^<207>Pb/^<204>Pb、^<208>Pb/^<204>Pb)はいずれも表層(現在)から約200万年前へ僅かに上昇した後、最底部(約700万年前)へ系統的な減少を示した。一方、Nd同位体比(ε_<Nd>値)は-5から-4.5の値を示し、約270万年前頃に極小値を示すものの、それ以外は誤差範囲内でほぼ同じ値であった。マンガンクラスト試料のNd同位体比は深層水/底層水の値を反映しているものと考えられる。従って、ε_<Nd>値が大きな変化を示していないことは約700万年前から現在にわたりこの海域では深層水/底層水の循環に大きな変化がなかったことを意味する。一方、Pb同位体比の系統的変化は深層水/底層水の循環の変化ではなく、大気経由で輸送される陸起源物質の供給量などの影響によるものと考えられる。これは海洋においてPbの平均滞留時間がNdに比べ短いことと調和的である。 学術研究船白鳳丸のKH-09-5次航海にてインド洋で採取した海水試料はNd同位体比の分析に供すべく、作成した鉄の沈殿を回収し塩酸に溶解した。
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