2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540505
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
太田 努 Okayama University, 地球物質科学研究センター, 助手 (80379817)
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Keywords | リチウム / 流体 / カンラン石 / 同位体分別 / 沈み込み帯 / 高温高圧実験 / 二次イオン質量分析装置(SIMS) |
Research Abstract |
本研究では.沈み込み帯マントルにおけるリチウム同位体の挙動を理解するために,実験岩石学的手法を用いて,代表的マントル鉱物であるカンラン石に対するリチウムの分配・同位体分別のパラメータを決定する. 本年度はまず、高純度粉末試薬を用いて(Hgカンラン石+水)の組成の出発物質を作製した.出発物質の主要元素組成,リチウム濃度および同位体組成は,XRF,汎用ICPHSおよびマルチコレクタ型ICPMSを用いて分析した.これを白金カプセルに封入し,ピストンシリンダー型高圧発生装置を用いて,2GPa, 900℃の条件でカンラン石を合成した.合成したMgカンラン石の組織観察と主要元素組成分析はSEM-EDSおよびEPMA,カンラン石のリチウム濃度および同位体組成分析は汎用SIMSおよび高分解能SIMSを用いて行った. 本研究では、実験準備中に蒸発・逸散する水の量を最小限にするために,出発物質には水酸化マグネシウムとして水を加え,添加するリチウム(~100,~1000wt.ppm)および水(~7, ~15wt.%)の量が異なる複数の出発物質で同じ温度圧力条件の実験を行い,カンラン石と共存した流体の組成をマスバランス計算で求める際の誤差を定量的に評価した. 合成したMgカンラン石の,結晶中および結晶間の組成均質性を,SIMSを用いた局所分析によって評価するために,粒径0.05mm以上の結晶を合成する必要があった。そこで、実験の圧力温度条件を固定して、実験時間を25~330時間と変化させたり,実験中に温度を変動させて結晶核の出現率や結晶成長速度を変化させたりするなどして,粗粒結晶の合成を試みた. その結果,リチウム約1000wt.ppmおよび水約7wt.%を含む出発物質から,加熱時間110時間の実験で,長径最大0.2mmのカンラン石が合成できた.結晶内および結晶間の組成均質性の評価も含めてリチウム同位体組成を分析した結果,カンラン石-水間のリチウム分配および同位体分別係数は,D(Fo/Fluid)=0.003±0.001,Δδ7Li (Fo/Fluid)=0.994±0.002と求まった.この結果は,今までの研究から予想されていたよりも有意に大きなリチウム同位体分別が,沈み込み帯マントルで起こりうることを示している.
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Research Products
(1 results)