2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21540505
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
太田 努 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 助手 (80379817)
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Keywords | リチウム / 流体 / カンラン石 / 同位体分別 / 高温高圧実験 / 二次イオン質量分析装置 / 沈み込み帯 |
Research Abstract |
本研究では,地球表層由来物質とマントル物質との化学的相互作用を理解するために,代表的マントル鉱物であるカンラン石と水流体の間でのリチウム分配・同位体分別のパラメータを実験的に明らかにすることを目指した.これまでの実験で合成したカンラン石のリチウム濃度は典型的なマントルカンラン石よりも10~20倍高かったので,本年度はリチウム含有量が低い出発物質(約100wt.ppm)を用いた.実験にはピストンシリンダー型高圧発生装置を用い,900℃,2GPaの温度圧力条件を26~312時間維持してカンラン石を合成した.回収したカンラン石のリチウム同位体組成は高感度二次イオン質量分析装置を用いて分析した. 合成したカンラン石の粒径は長径20~80μmと細粒であった.リチウム濃度はマントルカンラン石の数倍程度になったが,15倍程度高濃度の結晶も多数確認された.同位体組成も結晶間での不均質が顕著であった.300時間を越える長期の実験でも,リチウム同位体組成に関する不均質の程度は若干低減できたにすぎず,カンラン石-流体間におけるリチウム分配は平衡状態に至らなかったと判断される.したがって,典型的なマントルカンラン石と同程度にリチウム含有量が低いカンラン石と水流体との間のリチウム同位体分配を議論しうる成果は得られなかった. 一方,非平衡状態で合成されたカンラン石が得られたので,カンラン石結晶内の元素拡散に関する知見を得るため,単結晶内のリチウム同位体組成を分析した.結果として有意な組成勾配は確認されなかったが,今回の実験条件(900℃,2GPa)におけるリチウムの拡散が,二次イオン質量分析装置の空間分解能(現状で~10ミクロン程度)よりも狭い領域にしか及んでいない(非常に遅い)ことを示しており,将来的な実験計画の検討や分析技術の向上を図る上で有用な知見が得られたと言える.
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Research Products
(1 results)