2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子温度・密度および分子振動・回転温度計測のための水素分子衝突輻射モデルの構築
Project/Area Number |
21540508
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
澤田 圭司 信州大学, 工学部, 教授 (40262688)
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Keywords | 水素分子 / 衝突輻射モデル / 電子状態 / 振動状態 / 回転状態 / プラズマ診断 / 実効的速度係数 / 発光線解析 |
Research Abstract |
従来の我々の水素分子衝突輻射モデルでは、電子・振動状態だけを扱ってきたが、一般に、反応速度係数が分子の振動・回転状態に大きく依存するため、回転状態まで考慮したモデルを構築している。回転状態を考慮したモデルを用いると、さらに、分子発光スペクトルが計算できるため、分光計測データとの比較により、電子温度、電子密度、振動温度、回転温度などが評価できるようになる。 モデルにおける電子・振動・回転エネルギーとしてCrosswhiteのデータを用い、対応する融合原子の主量子数が4以下の2131のエネルギー準位を扱った。全準位で電子衝突遷移、自然放出を考慮し、電子基底状態ではさらに電子衝突による解離性励起、電子衝突による解離性付着、プロトン衝突による電荷交換、分子衝突遷移を考慮した。シュレーディンガー方程式を数値的に解いて振動波動関数を算出し、自然放出確率、およびフランクコンドン因子を計算した。b_3Σ_u^+およびX^1Σ_g^+の連続状態への自然放出確率も計算した。電子基底状態からの電子励起状態への電子衝突励起については、現時点では、電子状態のみを区別した速度係数をフランクコンドン因子によって振動状態に分け、さらに、光学的許容遷移はHonl-London因子で、光学的禁制遷移は上準位の回転状態の総数で割ることで回転状態に分けている。分子衝突による回転励起速度係数は、利用できるデータの不足から、すべての振動状態で電子基底状態内のrOと同じ速度係数を用いた。我々の研究室のRFプラズマを想定し、T_e=3.0 eV、n_e=10^<10>cm^<-3>、T_<H2>=300K、N_<H2>=10^<14>cm^<-3>の条件でポピュレーションおよび水素分子発光線スペクトルを計算した。今後、実験で得られた分子スペクトルとの比較を行なっていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素分子衝突輻射モデルの構築が進んでおり、水素分子の電子・振動・回転状態を区別したポピュレーション分布および水素分子発光線スペクトルが計算できるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、これまでに水素分子衝突輻射モデルに取り入れた各種の素過程データをさらに信頼性の高いものに更新していく。また、対応する融合原子の主量子数が5以上の準位を適切にモデルに組み込み、核融合プラズマのような高電子密度プラズマにも適用可能なモデルにする。一通り完成した後は、このモデルを用いて、実験で観測される水素分子発光線強度が合理的に解釈できるかどうかを確かめる。
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