Research Abstract |
昨年度は,水が関与するプラズマ化学反応過程のモデリングを行った.本年度からは,水中でのプラズマをモデル化・シミュレーションするための基礎に関する研究に着手した.まず,その挙動がよく知られている減圧プラズマを説明できるモデルの構築を行い,大気圧対応に発展させる.次に,水中での気泡発生モデルを完成させ,その気泡内での放電をモデル化する.本年度は,上記の中の減圧モデルの確立と,気泡発生モデルまでを完成させた.プラズマと気泡内壁などの界面との相互作用は,プラズマと表面との間のシースが重要な役割を果たす.その際,系全体をモデル化すると,多大な計算時間を必要とするため,界面近傍だけの問題を短時間で解けるモデルを構築した.その妥当性を,まず減圧プラズマのシース状態について模擬できるかどうかをチェックし,その妥当性を確認した.次に,液体中での気泡発生をモデル化するために,電極間の電界の計算,流れる電流によるジュール加熱による媒質の温度上昇,そして,沸騰による気泡発生までを,Maxwellの方程式,粒子連続の式,Navier-Stokesの式に対して,二相媒質のモデル化のためのLevel-Set法を組み合わせることによってモデル化した.すでに,実験的には気泡のサイズが印加電圧のパルス幅によって変わることが明らかにされており,パルス幅の増加に伴って定常的に形成される気泡のサイズが大きくなることがわかっている.1回の気泡発生の時間スケールと多数回のパルス印加を行う際の時間スケールが大きくことなるため,現段階では,1回の気泡発生時のサイズが,電圧印加時間に対して,どのように変わるかを計算し,実験結果の傾向を模擬できるかどうかを検証した.その結果,概ね気泡のサイズの増加傾向を模擬できるモデルが構築できていることを明らかにした.また,こうした液体が関与するプラズマを用いたプロセス応用についても着手し,薄膜堆積や粉体処理に利用できることを明らかにした.
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