2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダイレクト・アブイニシオMD法による溶媒和クラスターの実時間反応ダイナミクス
Project/Area Number |
21550002
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田地川 浩人 北海道大学, 大学院・工学研究院, 助教 (10207045)
|
Keywords | クラスター / 反応動力学 / 微視的溶媒和 / イオン化 / 電子捕捉 / SN2反応 / 氷表面 / 溶媒和電子 |
Research Abstract |
溶媒和クラスターは、固、液、気につぐ第4の相として注目を浴びている反応場であり、従来の方法では得ることが困難であった分子を、クラスター内で反応を引き起こすことにより、容易に、かつ効率的に合成することが可能となる。たとえば、液相では副反応が多い反応系をクラスター内に閉じ込め、光によって制御することにより、特異な反応だけを選択的に起こすことができる。しかしながら、クラスター内に閉じ込められた分子の光によるイオン化ダイナミックスについての情報は極めて限られている。これは単分子のイオン化と異なり、クラスター内のイオン化では、様々な反応チャンネルを経て反応生成物へ向かうため、実験的に、その複合的な反応過程を解析するのが困難であるためである。 本研究では、(1)溶媒和クラスター内での反応チャンネルを支配している因子の解明 : 生成物への経路は何によって支配されているか?、および、(2)これらの反応チャンネルを制御する方法の開発 : どのような実験条件であれば、単一チャンネルのみを取り出せるか?、の解明をめざし、ダイレクト・アブイニシオ・ダイナミックス法により、ベンゼン-水、ベンゼン-HF、エチレン-HF、およびホルムアニリド-H2Oのイオン化に伴う反応ダイナミックスを理論的に研究した。これら、すべての系において、10K以下の低温での光照射によるイオン化の場合、ベンゼンカチオン(またはエチレンカチオン)から中性分子が解離するチャンネルのみ観測されるが、30K以上の温度ではイオン-分子からなる強い結合力を持つ錯合体の観測されることを理論的に予測した。この結果は、クラスターの温度により、イオン化の際の反応チャンネルを任意に制御できることを示している。また、このモデルを拡張することにより、クラスター内での医薬品分子の分子設計が可能となる。
|
Research Products
(17 results)