2011 Fiscal Year Annual Research Report
単一分子蛍光分光法による孤立電荷移動錯体及び電荷移動錯体ナノ結晶の研究
Project/Area Number |
21550012
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
板谷 明 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (80035071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増尾 貞弘 関西学院大学, 理工学部, 准教授 (80379073)
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Keywords | 1分子計測(SMD) / 共焦点顕微鏡 / ナノ材料 |
Research Abstract |
1.無蛍光性高分子マトリックス中の孤立単一電荷移動(Charge-transfer : CT)錯体に単一分子蛍光分光法を適用してきた。本年度は、ホスト高分子として無極性のポリスチレン(PS)を用い、単量体Cz化合物とTCNB系孤立単一CT錯体の蛍光の強度・寿命の経時変化を測定し解析した。その結果を、PSに比べ少し極性を有する3種のメタクリレート系高分子系の結果と比較した。どの高分子中でも3種のパターンが観測されたが、ホスト高分子によりそのパターンの出現する割合が変化した。PS中での特徴は、CT蛍光のOff-stateの観測される割合がPMMA中に比べ大きく、また蛍光のサバイバルタイムが短いことが分かった。これらは、PSフィルムの自由体積がPMMAに比べ大きいことで説明でき、極性とは大きな相関は無いと考えられる。結局、Off-stateは、CT錯体が高分子の空隙内で電子受容体と電子供与体が多くの相対配置をとり、錯体の一時的な解離または無蛍光性のCT錯体の相対配置を生成したことによると考えられることが分かった。孤立単一CT錯体蛍光挙動に対するホスト高分子効果として論文が学術雑誌に掲載された。 2.CT錯体ナノ結晶の蛍光は、励起光により結晶がダメージを受け、その受け方がバルク結晶に比べ著しく小さいことが分かった。二量体Cz化合物系でも同様であった。ダメージの受け方は、CTナノ結晶のサイズに依存しているようであり、またダメージを受けたCTナノ結晶を暗所に放置するとダメージが回復する現象を見出した。この回復現象は、既報のバルク状態では報告されておらず、興味深い現象であり、光によるダメージの起源を明らかにする為にも、今後の検討が必要と考えられる。 3.昨年度、PMMA中でデュレンとジシアノアントラセン系のエキシプレックス蛍光の観測に成功した。本年度はPSをホスト高分子とした。蛍光寿命の解析は、5000光子の積算ごとに行っているが、PS中の場合、5000光子の積算の間にエキシプレックス蛍光とジシアノアントラセン蛍光が入れ替わり発光する現象を見出した。これは、PMMA中では観測されなかった。PSの自由体積がPMMAに比べ大きいとして説明できた。
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Research Products
(2 results)