2011 Fiscal Year Annual Research Report
初期構造を規定したプロトン化ペプチドにおけるプロトン・水素原子移動反応の直接観測
Project/Area Number |
21550016
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
石川 春樹 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (80261551)
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Keywords | 水素結合クラスター / プロトン移動反応 / 共鳴2光子イオン化 / 蛍光励起スペクトル |
Research Abstract |
本研究では,凝集系や生体内における反応の中でも基礎的で重要なプロトン/水素原子移動反応に着目し,長距離のプロトン/水素原子リレー反応のモデル系としてペプチド鎖に沿ったリレー反応の観測を計画した。試料の気化のために,当初はレーザー蒸発,加熱を検討しフェノール・グリシンクラスターの共鳴2光子イオン化スペクトルを測定していた。得られたスペクトルが非常にブロードであったが,このままでは本研究の実験のポイントとなる中性クラスターのイオン化時の異性体分離ができているかどうかが問題となる。そこで,本年度はより試料の気化が簡単なペプチド類似の化合物としてアミド結合を持つホルムアミド,N,N-ジメチルアミドとフェノールのクラスターの励起スペクトルを測定し,これまでの生成条件でのクラスターの冷却条件の確認を行い,フェノール・グリシンクラスターのスペクトルが本質的にブロードかどうかを検討することにした。まず,励起スペクトルの構造がわかりやすい蛍光励起スペクトルを測定し,上記のフェノールのクラスターの励起バンドを調べた。フェノール・ホルムアミドクラスターではクラスターのバンドと思われる新たなバンドがフェノール・水1対1クラスターの高波数側に確認できた。フェノール単量体の低波数側にバンドが現れているとすると,フェノールがプロトン供与体として働く形に結合していることが考えられる。しかしながら,フェノール-水クラスターに比べると非常にバンド強度が弱いため,事前にフェノールに含まれている水分を除去する必要がある。現時点では,研究で狙っていたプロトン移動反応機構を確認するに至らなかったが,クラスターの生成方法についての問題点や改良点についての情報の蓄積が今後の研究を進める上で役立つと考えている。
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