2011 Fiscal Year Annual Research Report
冷却イオンビーム近赤外・可視電子脱離分光法による溶媒和電子の研究
Project/Area Number |
21550018
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
原田 賢介 九州大学, 大学院・理学研究院, 講師 (70165017)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 桂一 九州大学, 宙空環境研究センター, 学術研究者 (50037280)
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Keywords | クラスター / 分子構造 / イオン錯体 / 溶媒和電子 / 陰イオン / 陰イオン錯体 / 近赤外分光 / 電子脱離分光 |
Research Abstract |
イオン種は溶液中では溶媒和により特有の構造と反応性を示す。陽イオンはH_3O^+(H_2O)_nのように溶媒和したイオンとして存在する。陰イオンはOH^-(H_2O)_nのように溶媒和した陰イオンとして存在する場合もあるが、無極性溶媒や極性溶媒でも多くの場合は溶媒和電子の形で存在すると考えられる。これらの構造と物性の研究はまだ未開拓の分野であり液相中の化学反応解明の上で極めて重要である。本研究では前期解離分光法や電子脱離分光法と高分解能分光法を組み合わせイオン錯体や溶媒和電子の分子構造決定手法を開拓する。 平成23年度は、特殊改造したANELVA AQA-360四極子型質量分析計、超音速分子線、電子衝撃イオン源、熱電子付着イオン源を組み合わせて製作したイオンビーム前期解離分光装置に、陰イオンおよび陰イオン錯体(溶媒和イオン)を効率よく生成するためのエレクトロスプレーイオン源(ESI)を製作し組み付けた。ESIイオン源を用いている研究者との研究交流により、ESIイオン源を安定に動作させるには、イオン源部分とイオン観測・検出部分を直交させた配置を用いる必要があると分かったため、現在イオンビームラインの改造中である。また平行して、製作した近赤外・可視分光装置のテストを行った。400nm-1550nmで出力3-100mWの様々な波長のシングルモード及びマルチモードの近赤外・可視レーザーを用いてスペクトルを観測し、性能テストを行った。電流による波数掃引範囲が短い(0.5cm-1程度)事が分かったため、フーリエ変換分光器により波長測定が容易にできる半導体レーザー・フーリエ変換分光装置を開発した。 今後、ESIイオン源と前期解離イオンビーム測定系を直交させたイオン光学系を完成させ、イオンの生成効率を高めた後、高分解能分光法による観測を行う予定である。陽イオン錯体はOH,NH,CHの2倍音や3倍音を近赤外レーザーで励起し前期解離させて質量分析計で検出する。陰イオンおよび陰イオン錯体や溶媒和電子の検出には電子脱離分光法を用いる。Ar-H_3O^+などの陽イオン,OH^-などの陰イオンを用いて初期テストを行い、その後、(H_2O)_n^-などの溶媒和電子について分光実験を行う予定である。
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Research Products
(5 results)